化学辞典 第2版 「表面不均一説」の解説
表面不均一説
ヒョウメンフキンイツセツ
surface heterogeneity
固体表面上の吸着点,あるいは触媒作用を示す活性点の機能に分布があるとする説.吸着については,吸着結合のエネルギーまたは吸着熱,触媒反応については,速度定数を構成する活性化エネルギー,頻度因子の分布,さらに反応経路の選択性についての分布が考えられている.粉末触媒表面の吸着で,吸着量の増加につれて吸着熱がいちじるしく減少する事実や,ニッケル表面がチオフェン,硫化水素で順次被毒したとき,ベンゼン,オレフィンの水素化活性が段階的に失われていく現象は,この考えから容易に理解される.この不均一性の原因は,表面上の露出格子面の分布や結晶の稜,角,空格子点,転位末端,ステップなどの不整部分の分布にもとづくともみることができるが,吸着分子の存在によって誘起された表面自由エネルギーの局部的変化によるとも考えられる.後者の考えによると,吸着量の増加が吸着分子間の反発を増大させ,吸着エネルギーを減少させることになる.表面不均一性の実験的証明には,同位体組成の異なる気体を段階的に吸着させたのち,順次脱離させたときの気体の組成を調べるD.I.M.法(Differential Isotope Method)が利用されるが,結論は必ずしも一義的ではない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報