チオフェン(読み)ちおふぇん(英語表記)thiophene

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チオフェン」の意味・わかりやすい解説

チオフェン
ちおふぇん
thiophene

硫黄(いおう)を環内にもつ5員環複素環式化合物の一つ。チオフェンの名は、硫黄を表す接頭語のチオthioとベンゼンを表すフェンpheneをあわせて命名された。コールタール中に含まれている。ベンゼンと沸点が近く、蒸留による分離が困難であったので、石油化学の発展以前にコールタールを原料としてつくった粗ベンゼンに含まれていた。工業的には高温でのブタンと硫黄との脱水素閉環反応により合成する。無色のベンゼンに似たにおいをもつ液体で、水には溶けないが、ベンゼン、エーテルエタノールエチルアルコール)などの溶媒と任意の割合で混じり合う。溶媒として用いられるほか染料、プラスチック、医農薬の原料になる。チオフェンが多数連なった構造のポリチオフェンは導電性高分子として知られている。

[廣田 穰]


チオフェン(データノート)
ちおふぇんでーたのーと

チオフェン

 分子式 C4H4S
 分子量 84.1
 融点  -38.30℃
 沸点  84℃
 比重  1.0617(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.5246
 引火点 -1℃

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チオフェン」の意味・わかりやすい解説

チオフェン
thiophene

化学式 C4H4S 。五員環の複素環式化合物。コールタールの成分であり,工業的に n -ブタンと硫黄からつくられる。無色の液体。沸点 84℃。特臭をもつ。溶媒として広く用いられるほか,有機合成原料としても用いられる。

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