チオフェン(その他表記)thiophene

精選版 日本国語大辞典 「チオフェン」の意味・読み・例文・類語

チオフェン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] thiophene ) 硫黄原子を含む五員環複素環式化合物。分子式 C4H4S タール、石炭ガス中に存在。ブタンと硫黄からも合成できる。ベンゼン臭のある液体。そのまま溶媒に用いたり、樹脂染料、医薬などの合成原料に用いる。

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改訂新版 世界大百科事典 「チオフェン」の意味・わかりやすい解説

チオフェン
thiophene


硫黄を含む5員環の複素環式化合物。コールタールからとったベンゼンより,1882年,マイヤーV.Meyerによって単離された。沸点84.4℃の液体で,ベンゼンに似た弱い芳香をもつ。水には溶けないが,通常の有機溶媒には可溶イサチン濃硫酸を作用させると青色を呈する(インドフェニン反応という)。非常に安定で,850℃に加熱しても分解しない。この安定性はチオフェンに芳香族性があるためである。その共鳴エネルギーは29~31kcal/molで,ベンゼンに比べやや小さいが,フランピロールよりも大きい。したがって,ジエンとしての性質をほとんど示さず,付加反応などは起こりにくい。ハロゲン化,ニトロ化,フリーデル=クラフツ反応などの求電子置換反応を受け,2位の水素が置換される。ブタン,ブテンあるいはブタジエンを硫黄とともに高温で加熱して製造される。実験室的には,コハク酸ナトリウムに五硫化リンP2S5を作用させると得られる。樹脂,染料,医薬品の合成原料となる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チオフェン」の意味・わかりやすい解説

チオフェン
ちおふぇん
thiophene

硫黄(いおう)を環内にもつ5員環複素環式化合物の一つ。チオフェンの名は、硫黄を表す接頭語のチオthioとベンゼンを表すフェンpheneをあわせて命名された。コールタール中に含まれている。ベンゼンと沸点が近く、蒸留による分離が困難であったので、石油化学の発展以前にコールタールを原料としてつくった粗ベンゼンに含まれていた。工業的には高温でのブタンと硫黄との脱水素閉環反応により合成する。無色のベンゼンに似たにおいをもつ液体で、水には溶けないが、ベンゼン、エーテル、エタノールエチルアルコール)などの溶媒と任意の割合で混じり合う。溶媒として用いられるほか、染料、プラスチック、医農薬の原料になる。チオフェンが多数連なった構造のポリチオフェンは導電性高分子として知られている。

[廣田 穰]


チオフェン(データノート)
ちおふぇんでーたのーと

チオフェン

 分子式 C4H4S
 分子量 84.1
 融点  -38.30℃
 沸点  84℃
 比重  1.0617(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.5246
 引火点 -1℃

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化学辞典 第2版 「チオフェン」の解説

チオフェン
チオフェン
thiophene

C4H4S(84.14).コールタール中に存在する.工業的にはブタンと硫黄を600 ℃ に加熱すると得られる.融点-38 ℃,沸点84.4 ℃.1.0617.1.5246.λmax 231 nm(log ε 3.85).水に不溶,有機溶媒に可溶.物理的,化学的にベンゼンに似た性質を示す.溶媒や樹脂,染料,医薬品などの合成原料に用いられる.[CAS 110-02-1]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チオフェン」の意味・わかりやすい解説

チオフェン
thiophene

化学式 C4H4S 。五員環の複素環式化合物。コールタールの成分であり,工業的に n -ブタンと硫黄からつくられる。無色の液体。沸点 84℃。特臭をもつ。溶媒として広く用いられるほか,有機合成原料としても用いられる。

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百科事典マイペディア 「チオフェン」の意味・わかりやすい解説

チオフェン

硫黄を含む5員環の複素環式化合物。ベンゼン臭のある無色の液体。融点−38.3℃,沸点84.4℃。水に不溶,有機溶媒に可溶。熱的に安定。濃硫酸に溶かすと黄褐色に着色。溶媒,合成樹脂,染料,医薬の合成原料。タール中に少量含まれ,工業的にはn-ブタンと硫黄から合成される。(図)

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