改訂新版 世界大百科事典 「袋骨」の意味・わかりやすい解説
袋骨 (たいこつ)
os marsupiale
哺乳類の後肢の近位端は,左右相称な腸骨,恥骨および坐骨と脊柱の一部(仙骨)とからできた箱形の構造物(骨盤)と関節する。単孔類と有袋類には,この骨盤を構成する恥骨の前縁(上縁)にゆるく結合するヤギの角のような形の前外方へ延びる1対の板状の骨があり,腹筋の中へ埋まっている。つまり,この扁平な骨は動物の腹筋を補強する役割を果たし,腹部に育児囊がある有袋類の雌にとっては重要なものである。この事実から,この骨は袋骨と名づけられたが,育児囊をもたぬ雄やそれのない有袋類にも認められるので,前恥骨(または上恥骨)と呼ぶのが正しい。また,この骨は真獣類には全く出現せず,単孔類,有袋類,真獣類がそれぞれ別々の祖先から進化した証拠の一つとして,しばしば引合いに出される。最近では,古い型の哺乳類や,爬虫類と哺乳類の橋渡しをする哺乳類型爬虫類からも発見されている。
執筆者:白石 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報