翻訳|monotreme
卵生の原始的な哺乳類で原獣亜綱単孔目Monotremataに属する。2科3種がありニューギニア,オーストラリア,タスマニアに分布する。爬虫類に似て総排出腔があり,肛門と尿生殖口が分かれていないため単孔類と呼ばれる。陰茎が尿を通さず,頸椎(けいつい)に小さな肋骨があるなどの点も爬虫類に似るが,皮膚には毛が生え,乳腺があるなどの点は他の哺乳類に等しい。四肢は短く,足裏をつけて歩く蹠行性(しよこうせい)で前・後足にはかぎづめをそなえる。吻(ふん)は角質のくちばしとなり,歯はないか,幼時に現れるにすぎない。目と耳介は発達が悪い。雄の後足のかかとにはけづめがあって毒腺が開口する。他の哺乳類と違って乳頭がなく,乳腺は腹面の乳腺区の皮膚か孵卵囊(ふらんのう)内に開口する。胸帯には烏口骨(うこうこつ),前烏口骨,間鎖骨があり,肩甲骨には棘(きよく)突起がない。腰帯には上恥骨がある。精巣は腹腔内に位置し,体温は不完全な恒温性で25~36℃の間を上下する。
ハリモグラ科にハリモグラとナガハシハリモグラ,カモノハシ科にカモノハシがある。原獣亜綱の中の唯一の生残りであるが,この亜綱の他の目との系統的な関係は現在のところほとんど不明である。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱単孔目に属する動物の総称。この目Monotremataの仲間(原獣亜綱)は、他の現生の哺乳類(獣亜綱)と異なり卵生で乳頭がなく、乳腺(にゅうせん)は腹面の乳腺区に開孔し、総排出孔がある。また、心臓の右側房室間に三尖弁(さんせんべん)がなく、頸(けい)部に独立した肋骨(ろっこつ)、胸帯に烏口(うこう)骨、前烏口骨、間鎖骨があり、肩甲骨に棘(きょく)突起がない。体長40~80センチメートル、体は毛または針状毛で覆われ、鱗(うろこ)の痕跡(こんせき)がある。四肢は短く、目が小さく、耳介はないか小さく、角質のくちばしがある。声帯がなく、不完全な恒温性で体温は25~36℃。卵は柔らかい殻に包まれ、多黄で局分割性、左の卵巣のものだけが発達する。雄のかかとには細い穴があいたけづめがあり、毒腺につながる。化石は知られていない。オーストラリア区の特産で、2科3~6種がある。(1)ハリモグラ科 オーストラリア、タスマニア、ニューギニア島にハリモグラとナガハシハリモグラ(数種)がある。陸生で歯がなくアリやシロアリを食べる。雌には腹部に育児嚢(のう)があり、卵をこの中に入れて育てる。(2)カモノハシ科 オーストラリアとタスマニアにカモノハシを産するのみである。水生で、幼時に歯が生える。水辺に穴を掘って巣とし、そこで卵を抱く。カモノハシの剥製(はくせい)標本は1798年にロンドンの大英博物館に到着したが、1802年まで合成物と思われていた。カモノハシとハリモグラが卵生とわかったのは、ともに1884年である。
[今泉吉典]
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