改訂新版 世界大百科事典 「裁判所規則」の意味・わかりやすい解説
裁判所規則 (さいばんしょきそく)
最高裁判所規則ともいわれる。法令の一形式であり,法律が国会により,政令が内閣によって制定されるのに対し,裁判所規則を制定する主体は最高裁判所である(憲法77条)。おもな例としては,民事訴訟規則,刑事訴訟規則,家事審判規則等がある。下級裁判所も最高裁から委任を受けて規則を制定することがある。明治憲法の下では裁判所にこのような規則制定権が認められていず,行政権に属する司法大臣の定めるところにより規律されていた。国家機関として独立の裁判所を設置しこれに規則制定権を与えるのは,現行憲法にあらわれた英米法型の司法国家観の影響の一つである。裁判所規則に定めることができる事項として憲法が認めるのは,訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項である。これらについては国会の法律が規定を設けることもでき,もし裁判所規則の定めと法律の定めが一致しないときは法律が優先するという見解が通説となっている。しかし訴訟法などには裁判所規則に多くを委任する傾向もみられる。
執筆者:住吉 博
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