化学辞典 第2版 「補償効果」の解説
補償効果
ホショウコウカ
compensation effect
反応速度定数の熱力学的表現において,反応の原系と活性錯体との間の活性化平衡に対応する活性化自由エネルギー
Δ G = Δ H - TΔ S
が,反応分子や触媒を系統的にかえたとき,あるいは触媒の処理条件を組織的にかえたとき,活性化エンタルピーΔ Hと活性化エントロピーΔ Sが並行して増減するため互いに打ち消し合い,全体としてのΔ Gの変化を小さくする効果をいう.速度定数kは,
(kB:ボルツマン定数,h:プランク定数,R:気体定数,T:絶対温度)で与えられるから,この効果は活性化エネルギーの増加による速度の減少が頻度因子の増加で補償される形をとる.アセトンジカルボン酸の脱炭酸反応の溶媒の効果,メンシュトキン反応におけるアルキル基およびアミンによる速度変化や酸化マグネシウムの処理による一酸化二窒素(N2O)の分解活性などがこの例である.補償効果は速度過程のみでなく,化学平衡にもみられるので,反応する分子間の相互作用エネルギーの一般的性質にもとづく現象と考えられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報