活性錯体(読み)カッセイサクタイ

化学辞典 第2版 「活性錯体」の解説

活性錯体
カッセイサクタイ
activated complex

活性錯合体ともいう.化学反応において,できるだけエネルギーの低い経路を選びつつ,原系から生成系へ向かって原子配置の組換えが行われる際,通る経路のなかで自由エネルギーの最高の位置に相当する状態をいう.この状態は,結合距離関数として反応系ポテンシャルエネルギー(正確には自由エネルギー)の曲面を考えるときのいわゆる鞍点に相当する.活性錯体は並進,回転,振動自由度をもつ一種分子であるが,反応座標軸方向への振動のみが原系および生成系へ等しい確率で分解を引き起こす.遷移状態理論は原系と平衡にある活性錯体を考え,その生成系への分解をもって反応速度を評価する理論である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「活性錯体」の意味・わかりやすい解説

活性錯体
かっせいさくたい
activated complex

化学反応が起るためには,その反応系は生成系にいたるまでの間で,原系よりポテンシャルエネルギーの高い,活性化に必要なエネルギーをもった,いわば遷移状態を通らなければならない。この状態にある不安定な分子間結合物 (分子錯体) を活性錯体という。

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世界大百科事典(旧版)内の活性錯体の言及

【有機化学反応】より

…E,F,Gが高い反応性のためごく短寿命で,その結果単離はできないがその存在を証明しうる場合,これらは遷移状態transition statesと呼ばれる。遷移状態にある系を活性錯体activated complexという。反応の進行は,横軸に反応の進行,縦軸に反応系のエネルギーをプロットしたエネルギープロフィル図energy profile diagramで模式的に示される。…

※「活性錯体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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