改訂新版 世界大百科事典 「調節麻痺」の意味・わかりやすい解説
調節麻痺 (ちょうせつまひ)
accommodation paralysis
眼内のレンズである水晶体の厚さを増して,近くの目標物を見るためにピントを合わせることを調節という。この調節力が低下すると,遠くのものはよく見えていても,近くのものにピントが合わず,見えにくい状態が起きる。老化によって調節力が低下する生理的な状態が老視(老眼)であるが,老視以外の病的原因でこのような状態が起きたものを調節麻痺という。水晶体の厚さを増すために働く毛様体筋や動眼神経の麻痺,あるいは脳の中枢の病変によって起こる。原因としてはアトロピンなどの薬物の影響によることが多い。そのほか,脳炎,ジフテリア,食中毒,頭部外傷なども原因となり,また糖尿病などの全身疾患,緑内障などの眼疾患に伴って起こる場合もある。一方,遠視や斜視の検査のため,薬物点眼によって一時的調節麻痺を起こさせることも多い。原因となる疾患に対する治療で調節力が改善しない場合は,手近での作業に凸レンズの眼鏡を装用する。
執筆者:山本 裕子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報