アトロピン(読み)あとろぴん(英語表記)atropine

翻訳|atropine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アトロピン」の意味・わかりやすい解説

アトロピン
あとろぴん
atropine

ナス科の植物に含まれるアルカロイドの一種で、天然にはl‐ヒヨスチアミンとして存在し、抽出の過程でdl体となる。1831年ベラドンナ根より分離された。日本薬局方には硫酸アトロピンとして収載されている。硫酸アトロピン無臭無色の結晶または白色結晶性粉末で、水にきわめて溶けやすい。代表的な副交感神経遮断薬(抗コリン薬)で、副交感神経節後線維に働き、アセチルコリンと競合反応をおこして遮断する。また、平滑筋および分泌腺(せん)の機能を抑制することから、消化器や気管支など平滑筋臓器のけいれん緩和に鎮けい剤として、また消化性潰瘍(かいよう)の治療および止汗剤などにも応用される。実際にはアトロピンをおもな有効成分とするロートエキスがよく用いられる。そのほか、瞳孔(どうこう)を広げる作用があるので、眼科では散瞳剤として点眼、注射、内服に用いられる。硫酸アトロピンは毒薬、その製剤劇薬であり、使用時には十分注意する。副作用として口渇、顔面紅潮、瞳孔散大乱視、尿閉などがみられる。常用量は1回0.5ミリグラム、1日1.5ミリグラム、極量は1回1ミリグラム、1日3ミリグラム。

[幸保文治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アトロピン」の意味・わかりやすい解説

アトロピン
atropine

ナス科の植物に含まれるアルカロイド。抗アセチルコリン作用があり,副交感神経緊張状態,すなわち,平滑筋の収縮分泌などが過度の状態に有効である。この合成品および半合成品は鎮痙,分泌抑制,止汗,抗潰瘍などの目的で治療薬として用いられる。緑内障,前立腺肥大患者への投与は禁忌である。また,ホマトロピンは瞳孔拡大に用いられる。硫酸アトロピンの中毒では,けいれん,発熱振戦などの症状が現れる。 (→副交感神経遮断剤 )

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