改訂新版 世界大百科事典 「諏方大明神画詞」の意味・わかりやすい解説
諏方大明神画詞 (すわだいみょうじんえことば)
信濃国の一宮であった諏訪大社の縁起。1356年(正平11・延文1)成立。12巻。もと《諏方大明神縁起絵巻》《諏方縁起》などと称し,絵巻物であったが,絵は早く失われ,詞書の部分のみの写本が伝わっている。著者は諏訪(小坂)円忠(1295-1364)。諏訪上社大祝(おおほうり)神氏の庶流小坂家の出身で,室町幕府の奉行人であった。成立の事情については洞院公賢の《園太暦》によって知られるが,失われた《諏方社祭絵》の再興を意図したものであった。画詞は〈縁起〉5巻(うち2巻は後補)と〈祭〉7巻から成り,各巻に後光厳天皇筆の外題と足利尊氏の奥書をもつ。〈縁起〉の部分は,諏訪社についての記録や伝承をもとに,沿革や霊験について述べる。また〈祭〉の部分は,御室(おむろ)神事,大御立座神事,たたえ神事,御射山(みさやま)神事など,上社を中心とした一年中の神事について詳述している。中世の諏訪社のありさまを知る基本史料である。《続群書類従》所収。最も善本とされる権祝本の影印本が出ている。
執筆者:村下 重夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報