豊蔵坊信海(読み)ほうぞうぼうしんかい

改訂新版 世界大百科事典 「豊蔵坊信海」の意味・わかりやすい解説

豊蔵坊信海 (ほうぞうぼうしんかい)
生没年:1626-88(寛永3-元禄1)

江戸前期の狂歌師。享年54歳説もある。名は孝雄,字は子寛,別号は玉雲翁,覚華堂など。山城男山八幡宮の社寺豊蔵坊の社僧俳諧もよくしたが,とくに狂歌に名高く,家集に《狂歌鳩の杖》があり,《富士狂詠》も著名である。門人永田貞柳,黒田月洞軒など。〈三国の山の中でも伽羅ぢゃ富士はあの空焼(そらだ)きの煙見るにも〉(《古今狂歌仙》)。
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朝日日本歴史人物事典 「豊蔵坊信海」の解説

豊蔵坊信海

没年元禄1.9.13(1688.10.6)
生年:寛永3(1626)
江戸時代の狂歌作者。名は孝雄,字は子寛。覚華堂,玉雲翁,牛庵,鳩嶺などの号がある。山城国(京都府)石清水八幡宮の社寺豊蔵坊の社僧。石清水八幡本坊の松花堂昭乗に書を,小堀遠州(政一)に雅事を,松永貞徳に俳諧を学んだ。狂歌は正親町実豊,中院通茂 らの貴紳との応酬もあり,『古今夷曲集』に24首が入集するほか,この時期の諸書に散見し,公刊歌集に『狂歌鳩杖集』2冊がある。社用のためか,江戸に往来することしきりで,東海道中の作も多く,連作「富士狂詠」41首なども知られている。初期教養人の余技的狂歌から職業的狂歌への橋渡し的存在で,門下には江戸の旗本黒田月洞軒や大坂歌壇の大立者油煙斎貞柳がいる。

(園田豊)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「豊蔵坊信海」の解説

豊蔵坊信海 ほうぞうぼう-しんかい

1626-1688 江戸時代前期の僧,狂歌師。
寛永3年生まれ。山城(京都府)石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)豊蔵坊の社僧。豊蔵坊孝仍(こうじょう)の跡をつぐ。松花堂昭乗に書を,小堀遠州に茶道を,松永貞徳に俳諧(はいかい)をまなぶ。狂歌をよくし,門人に永田貞柳がいる。貞享(じょうきょう)5年9月13日死去。63歳。名は孝雄。字(あざな)は子寛。別号に玉雲翁,覚華堂。作品に「狂歌鳩杖(はとのつえ)集」「豊蔵坊信海狂歌集」。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「豊蔵坊信海」の意味・わかりやすい解説

豊蔵坊信海
ほうぞうぼうしんかい

[生]寛永12(1635)
[没]元禄1(1688)
江戸時代前期の狂歌作者。山城男山八幡豊蔵坊の社僧。名,孝雄。字,子寛。別号,玉雲軒,玉盧,覚華堂,牛庵。狂歌のほかに俳諧もよくした。家集『鳩杖集』 (1729) がある。

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世界大百科事典(旧版)内の豊蔵坊信海の言及

【狂歌】より

…寛永以後は貞門俳人が中心で,松永貞徳,斎藤徳元,半井卜養,池田正式(まさのり),石田未得,高瀬梅盛らにまとまった作品があり,俳諧点取りの奥書に狂歌が応酬されていたりする。《古今夷曲集》の生白庵行風(せいはくあんこうふう)や《鳩の杖集》の豊蔵坊信海(ほうぞうぼうしんかい)になると,俳諧より狂歌に重点が移ってくる。この時代には狂歌集もぼつぼつ出版され,小説,笑話,紀行,地誌などにも狂歌がとり入れられている。…

※「豊蔵坊信海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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