永田貞柳(読み)ながたていりゅう

改訂新版 世界大百科事典 「永田貞柳」の意味・わかりやすい解説

永田貞柳 (ながたていりゅう)
生没年:1654-1734(承応3-享保19)

江戸中期狂歌師由縁油煙)斎貞柳,鯛屋貞柳ともいう。本名は榎並善八。別号は良因,言因,珍菓亭など多数。紀海音の兄。大坂御堂前の菓子屋。俳諧を父貞因に,狂歌豊蔵坊信海に学ぶ。信海ゆずりの〈箔(はく)の小袖に縄の帯〉をモットーに,通俗歌風で大いに流行し,狂歌の隆盛をもたらした。門人は大坂の栗柯亭木端,住吉の貞堂,広島の貞佐,名古屋の米都・其律など多数。編著は《狂歌五十人一首》《家づと》《続家づと》など,家集に《貞柳翁狂歌全集類題》がある。〈富士の山夢に見るこそ果報なれ路銀もいらずくたびれもせず〉(《貞柳翁狂歌全集類題》)。なお,〈月ならで雲の上まですみのぼるこれやいかなるゆえんなるらん〉(《家づと》)を契機に,由縁(油煙)斎と改名した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「永田貞柳」の意味・わかりやすい解説

永田貞柳
ながたていりゅう
(1654―1734)

江戸中期の狂歌作者。名は良因、のち言因。父貞因(ていいん)は禁裡(きんり)御用を勤めた大坂雛屋(ひなや)町の菓子商鯛屋(たいや)。貞因も叔父貞富(ていふ)も俳諧(はいかい)をよくし、弟は浄瑠璃(じょうるり)作者紀海音(きのかいおん)という風流一家。早く狂歌を豊蔵坊信海(ほうぞうぼうしんかい)に学んで『後撰夷曲集(ごせんいきょくしゅう)』に10代で入集(にっしゅう)した以後、「箔(はく)の小袖(こそで)に縄の帯」すなわち雅俗折衷の平明な狂歌を理想として、大坂の庶民に狂歌を普及させた。とくに南都古梅園(こばいえん)の墨が天覧に入ったと聞いて「月ならで雲の上まですみのぼるこれはいかなるゆえんなるらん」と詠んで評判になったのにちなみ、油煙斎(ゆえんさい)、由縁斎と唱えてから名声いよいよ高く、門人は西日本や中京にまで広がった。家集に『家づと』『続家づと』があり、死後に『貞柳翁狂歌全集類題』(1809)がある。

[浜田義一郎]

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百科事典マイペディア 「永田貞柳」の意味・わかりやすい解説

永田貞柳【ながたていりゅう】

江戸中期の狂歌作者。通称永田良因,のち言因。号は油煙斎,由縁斎など。大坂の菓子商〈鯛屋〉に生まれ,歌学を貞徳,俳諧を貞室に学んだ。弟は浄瑠璃作者の紀海音。早くから狂歌を好み,豊蔵坊信海・黒田月洞軒の指導を受けた。〈浪花ぶり狂歌〉と呼ばれる雅俗折衷の作風を持ち,多数の門弟を育てて〈狂歌中興の祖〉と評された。晩年に狂歌集《家づと》《続家づと》を刊行した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「永田貞柳」の解説

永田貞柳 ながた-ていりゅう

1654-1734 江戸時代前期-中期の狂歌師。
承応(じょうおう)3年生まれ。紀海音(きの-かいおん)の兄。家は代々鯛屋と称する大坂の菓子商。父貞因に俳諧(はいかい)を,豊蔵坊信海に狂歌をまなぶ。通俗,平明で機知に富んだ狂歌で,その歌風は上方を中心にひろく流行した。享保(きょうほう)19年8月15日死去。81歳。本姓は榎並(えなみ)。名は良因,言因。通称は善八。別号に油煙斎。作品に「家づと」など。
【格言など】百居ても同じ浮世に同じ花月はまんまる雪はしろたへ(辞世)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「永田貞柳」の意味・わかりやすい解説

永田貞柳
ながたていりゅう

鯛屋貞柳」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の永田貞柳の言及

【狂歌】より

… 近世中期には中心が大坂に移り本格的な流行期を迎え狂歌師も職業化してくる。大坂御堂前の菓子屋永田貞柳は,一族ことごとく狂歌をたしなみ,通俗的な作風で人気を博し門弟三千と称し,大坂の栗柯亭木端(りつかていぼくたん),一本亭芙蓉花(いつぽんていふようか),混沌軒国丸(こんとんけんくにまる),広島の芥川貞佐,名古屋の秋園斎米都,永田庵其律,江州八幡の千賀,京都の篠田栗彙ら皆貞柳の流れをくむ人々である。このころ京都には公家の風水軒白玉(正親町公通(おおぎまちきんみち))や自然軒鈍全,九如館鈍永がいた。…

※「永田貞柳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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