大学事典 「貧困学生」の解説
貧困学生
ひんこんがくせい
大学生協の「学生生活実態調査」によれば,家賃や公共料金等を除いて,学生が自由に使える金額は1980年代よりも2000年代は少ないという。また1990年代には,下宿生で毎月10万円以上の仕送りを受けている学生は6割を超えていたが,2014年現在では3割ほどで,5万円未満の学生が2割以上になっている。貧困学生の増加はあきらかだが,彼/彼女たちが属す機制の従来との違いに注意しなければならない。1950年代から60年代には政治的な主体の「層としての学生」(武井昭夫)が見いだされたように,90年代以後の労働力の流動化のなかで,まずはアルバイトを強いられる貧困学生は安価な労働力商品の「層」として見いだされ,さらに2004年の日本育英会から日本学生支援機構への移行を通じて,「奨学金」という名の学生ローンの負債を負う金融商品となる。今日の学生の貧困は経済に組み込まれることによってつくりだされているのであり,経済のくびきを逃れた自律的な貧しさという,学生の古典的なイメージとはかけ離れたものである。
著者: 白石嘉治
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報