政府や地方自治体が水準設定に関わる料金の総称。鉄道や郵便、電気料金のように政府が価格を認可するものと、国内航空運賃や固定電話の通話料金といった届け出制のものがある。政府は消費税引き上げに際し、公共料金も「円滑かつ適正な転嫁を基本として対処する」として、合理的な範囲内で値上げを行うべきだとの方針を示している。
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国または地方公共団体の規制のもとに置かれている公益性の強い財・サービスの価格をいう。これらの財・サービスは政府企業および民間企業のうち公益事業と称される事業によって供給されている。政府がその価格決定に直接介入する理由は、民間市場にゆだねておいては最適な資源配分が期待できなかったり、所得分配上の配慮が必要であったりするためである。典型的なケースとして費用逓減(ていげん)産業がある。この産業の場合には、巨大な設備を必要とするため総需要に比して固定費が相対的に大きく、規模の経済が存在し、私企業間の自由競争は企業の巨大化、独占の発生を結果する。このことはひいては高料金、巨大な独占利潤という、所得分配上も資源配分上も望ましくない状態を招くので、政府の規制が必要となる。
[藤野次雄]
公共料金をその決定手続の方法によって分類すると、以下のようになる。
(1)郵便料金などのように法律で定められ、その変更は国会の議決によるもの。
(2)生産者・消費者米価、国立学校の授業料などのように行政当局の決定により定められるもの。
(3)電力・ガス料金、鉄道運賃などのように政府の認可により定められるもの。
(4)公営水道料金などのように地方公共団体が決定し、政府に届け出るもの。
(5)公衆浴場の料金などのように都道府県知事が最高価格を決定するもの。
一般的な公共料金の価格決定には、政治的決定、行政的決定、公益事業者の自主決定があり、どの方式が望ましいかは、事業の性格や外部環境などに依存するため、一律に規定することは困難である。しかし、公共料金の決定が専門的、技術的であり、企業経営の弾力的運営を妨げないためには、議会における与野党の駆け引きに影響されないようにすべきである。
[藤野次雄]
公共料金の構成要素として算定基準の根拠とされているものに、総括原価主義と公正報酬原則とがある。総括原価主義とは、事業の遂行に要する原価(営業費+原価償却費+支払利子+諸税金)を基礎にしてその原価を保証する収益を料金決定の算定基準にしようとするもので、原価保証主義ともいい、独立採算性の原則に対応するものである。この決定方式は経営の安定性を保証するものであるが、原価節減への経営的インセンティブ(誘因)を生じさせないという問題点をもっている。これに対して、公正報酬原則とは、消費者の便益のために使用されている「真実かつ有効な」事業財産に対して、公正報酬を得させる料金決定方式〔営業費+(建設当初の新財産の公正価値-財産価値の原価額)×報酬率〕である。
[藤野次雄]
電気、ガス、水道などの費用逓減産業では、規模の経済が存在し、固定費が総需要に比べて膨大であり、平均費用曲線の右下がりの部分で需要曲線と交わる。この場合、資源の効率的配分を達成するという政策目標からは、需要曲線と限界費用曲線との交点で価格と生産量を決定すること(限界費用価格形成原理)が望ましい。しかし、このような価格形成原理を採用すると、限界費用曲線が平均費用曲線より下方にあるため、かならず損失が生じる。この赤字は、公企業でも私企業でも、資源配分の効率性をゆがめないような税金(一括固定税)で収入を調達し、補助金を交付して補填(ほてん)しなければならない。ところで、補助金を交付してまでも赤字を埋め、この財・サービスを供給すべきかどうかの基準は、消費者余剰と生産者余剰を合計した経済全体の総余剰が赤字額を上回っているかどうかに依存する。
この価格形成原理を採用するうえでの実際上の問題点として次の2点があげられる。第一は、資源配分をゆがめないような一括固定税といったものは現実には存在しえないし、さらに所得税で代替する場合には資源配分に中立的でなくなることである。第二は、政府がこの企業の赤字をかならず補填するということによって、費用最小化への経営的インセンティブが働きにくくなるという問題である。このような観点から、現実的には赤字を生じさせない平均費用価格形成原理ないし独立採算主義が採用される場合がある。
[藤野次雄]
公共料金の決定について、資源の効率的配分の観点から述べたが、現実には他の経済政策の目標からも影響を受ける。まず、所得の公平分配という観点から、特定の需要者に対する割引制度(鉄道の通勤・通学定期券割引など)がある。この場合、一般の需要者から特定の需要者に所得が移転することになるが、それは国民経済全体からみるとかならずしも公平な所得再分配であるとは限らない。また、物価安定という観点から、公共料金を低く抑える場合がある。この場合には、この財・サービスの消費は過大になり、資源の効率的配分がゆがめられるとともに、価格を低く抑えた分に相当する政策実行上のコストを政府が補填しない限り、公企業は自己責任のもとで経営を遂行することができなくなる。
[藤野次雄]
『一瀬智司他編『公共企業論』(1977・有斐閣)』▽『北久一著『公益企業論』(1963・東洋経済新報社)』▽『大石泰彦・熊谷尚夫編『近代経済学2 応用経済学』(1970・有斐閣)』▽『今井賢一他編『価格理論Ⅱ』(1971・岩波書店)』▽『貝塚啓明・兼光秀郎編『現代日本の経済政策』(1981・日本経済新聞社)』▽『経済企画庁物価局編『公共料金ハンドブック』(1996・経済企画協会)』
公共料金は通常,総務庁(2001年の省庁再編により総務省)の〈消費者物価指数年報〉で公共料金に分類される品目の価格をさしている。そのおもなものに,電気料,ガス代,水道代,公営住宅家賃,社会保険診療報酬,国・公立病院の入院費,私鉄・国鉄(現JR)運賃,バス代,タクシー代,郵便料,電話料,国・公立学校の授業料,各種手数料などがあり,合計で37品目に及んでいる。平均的な家計の年間支出額に占める公共料金への支出割合は1995年度で約11.2%である。これらの品目は,政府や地方自治体,公社・公団などの公共法人および民間の公益企業によって供給されているものが大部分を占めている。
公共料金の決定には大きく分けて,国会の議決によるもの(電話・電報料金,郵便料金,国鉄運賃),政府が決定するもの(国立大学の授業料,社会保険診療報酬,国立病院の入院費など),政府が認可するもの(電気料金,都市ガス料金,私鉄運賃,バス運賃,タクシー運賃,航空運賃など)および地方公共団体が決定するもの(公営水道料金,公立学校授業料,公衆浴場入浴料金)がある。
政府が認可する公共料金はおもに民間公益企業の供給するサービスの料金であるが,これの決定には総括原価方式が適用されている。総括原価とは,標準的な生産量を効率的に生産する場合に要する一切の費用に適切な利潤を加えたものであり,料金は収入が総括原価を上まわらないような水準に決定される。国会や政府および地方自治体が決定する公共料金の大部分は,政府や地方自治体が現業として供給しているサービスや,政府や地方自治体が出資する公共法人の供給するサービスの料金であるが,これらのうち国鉄運賃,郵便料,電話料,高速道路料金,水道料などは各事業の独立採算を原則として決められている。これに対して,国・公立学校授業料,公立幼稚園保育料などにはこの原則は適用されておらず,政策料金として,供給に要する費用よりも低い水準に決められている。
執筆者:奥野 信宏
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