日本大百科全書(ニッポニカ) 「超格子素子」の意味・わかりやすい解説
超格子素子
ちょうこうしそし
超格子素子とは天然結晶の10倍以上の空間周期をもった人工結晶をつくって、それを利用した電子デバイスのことをいう。超格子は型、厚さ、不純物濃度を分子線エピタキシー(MBE)や有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法などで、基板結晶上に異種の原子層を交互に成長させてつくるが、各層の厚さは1~20ナノメートル(10億分の1メートル)と原子長単位で測られるほど薄い。こうしてつくられた天然には存在しない超格子では結晶の電子の伝導帯がミニバンドに分裂されるので電子は特殊なふるまいをする。江崎玲於奈(れおな)によって1969~70年に提案されてから、半導体超格子、遷移金属や希土類金属による磁性超格子、酸化物超伝導超格子がつくられ、素子への適用が進んでいる。半導体超格子素子では、電子は散乱を受けず特定の層に沿って走ることができるので、HEMT(高電子移動度トランジスタ)のような高速トランジスタが実用化されている。また、小さく積み上げた発光用の化合物半導体よって量子井戸をつくると、レーザーの発振波長を短くできることから青色半導体レーザーが実現され、さらに量子効率があがることから小形で出力の大きい半導体レーザーが製作されている。
[岩田倫典]