家庭医学館 「転移性肝がん」の解説
てんいせいかんがん【転移性肝がん Metastatic Liver Cancer】
ほかの臓器・組織のがんが転移してきたものが転移性肝がんで、肝がんの4分の3は、じつはこの転移性肝がんです。
がんの転移は、動脈系とリンパ系がおもなルートです。ところが、肝臓には、このほかに門脈(もんみゃく)(小腸(しょうちょう)が吸収した栄養素を肝臓へ運ぶ血液の流れる血管)という血管系が存在し、ここを介して胃がん、膵(すい)がんなどの消化器がんが転移してくるため、ほかの臓器に比べると、がんが転移してくる頻度が高いのです。
とくに肝臓に転移しやすいのは、大腸(だいちょう)がん、胃がん、胆道(たんどう)(胆嚢(たんのう)・胆管(たんかん))がん、膵がん、乳がんなどです。
がん病巣は、多発するケースがほとんどですが、単発のこともあります。
[症状]
がん病巣が小さく、少数のときには、無症状のことが多いのですが、全身のだるさ、食欲不振、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)(ふくれ感)などが現われることがあります。進行すると、黄疸(おうだん)、腹水(ふくすい)、体重減少などが現われます。
超音波検査、CT、MRI、血管造影などの画像診断で診断がつきます。
[治療]
転移性肝がんの多くは、肝臓のはたらきが正常で、慢性肝炎(まんせいかんえん)、肝硬変(かんこうへん)をともなっていません。
このため、肝切除術(かんせつじょじゅつ)が適応となることが少なくありません。
肝切除術が適応となるのは、①もとのがんを完全に切除できるか、すでに切除されている、②肝臓以外に転移がない、③肝臓のがん病巣が一定の範囲内に集中している、④手術に耐えられる肝臓のはたらきと体力が残っている、などの条件に適合するケースです。
このような条件を満たすケースは大腸がんに多く、肝切除を行なった場合の5年生存率は、30~40%ですが、年々、向上してきています。
肝切除術を行なえない場合は、経(けい)カテーテル肝動脈塞栓術(かんどうみゃくそくせんじゅつ)、肝動脈内抗がん剤注入療法、マイクロウェーブ療法(肝細胞がんの「治療」のPMCT(マイクロウェーブ療法)が行なわれますが、肝切除術に比べると5年生存率は低くなります。