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肝細胞がん

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栄養・生化学辞典の解説

肝細胞がん

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出典|朝倉書店
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家庭医学館の解説

かんさいぼうがん【肝細胞がん Hepatocellular Carcinoma(HCC), Liver Cell Carcinoma】

◎肝炎(かんえん)・肝硬変(かんこうへん)から発症
[どんな病気か]
[原因]
[症状]
[検査と診断]
[治療]

[どんな病気か]
 肝細胞(肝臓のはたらきを担っている細胞)に似た細胞のがんで、原発性肝(げんぱつせいかん)がん(コラム肝がんのいろいろ」)の約90%以上がこの肝細胞がんです。
 日本でこのがんができやすいのは、50~60歳代の人で、7対1の割合で男性のほうが多くなっています。
 近年、肝細胞がんの発生率が男女ともに増加してきています。
●肝細胞がんと転移
 肝細胞がんは、肝臓の中で転移することが多いものです(肝内転移(かんないてんい))。それも比較的早期の段階からみられます。このため、肝細胞がんが発見された時点で、すでに複数の箇所に発生しているケースも少なくありません。この場合には、多中心性発がん(コラム「肝細胞がんの再発と多中心性発がん」)の可能性もあり、腫瘍(しゅよう)の大きさ、組織型などで両者を区別します。
 肝細胞がんが、肝臓以外の臓器・組織に転移するのを肝外転移(かんがいてんい)といい、かなり進行してから血液を介して肺、副腎(ふくじん)、骨に転移することが多いものです。骨に転移し、骨の痛みや骨折をきっかけとして肝細胞がんが発見されることもあります。

[原因]
 肝細胞がんになった人の約80%は、慢性肝炎か肝硬変(かんこうへん)を患(わずら)っています。
 健康な肝臓に肝細胞がんが発生することもありますが、まれです。
肝炎ウイルスと肝細胞がん
 この慢性肝炎と肝硬変の90%以上が、C型肝炎ウイルスかB型肝炎ウイルスの感染でおこったものです。なかでも、C型肝炎ウイルスの感染からおこった慢性肝炎・肝硬変の頻度が高く、全体の80%近くを占め、B型肝炎ウイルスによるものは、10%台です。
 C型肝炎ウイルス感染後、慢性肝炎、肝硬変を経て20~30年して発症というのが、典型的な肝細胞がんのおこり方です。
 アルコール性肝硬変から肝細胞がんが発生することもありますが、全体の数%にすぎません。いいかえれば、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスの感染でおこる慢性肝炎と肝硬変が肝細胞がんの最大の原因ともいえるのです。
 このため、C型・B型肝炎ウイルスの感染でおこった慢性肝炎と肝硬変を、高危険群(ハイリスク・グループ)と呼んでいます。
 高危険群の対策 高危険群にランクされる人には、肝細胞がんを早期発見するためのスクリーニング検査を実施する必要があります。
 慢性肝炎は、年2回の超音波検査と年3回の腫瘍(しゅよう)マーカー(「腫瘍マーカー」)の検査、肝硬変は、年4回の超音波検査と年6回の腫瘍マーカー検査を行ないます。このスクリーニング検査で異常(肝内占拠病変=SOL)が発見された場合は、精密検査が必要になります。
●その他の原因
 かび毒のアフラトキシンが肝細胞がんを発症させることが知られています。
 まれですが、経口避妊薬、消耗性疾患の治療に用いるたんぱく同化ステロイドホルモン薬、塩化ビニールが肝細胞がんを誘発することもあります。

[症状]
 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、一般的には肝がん特有の症状はありません。慢性肝炎や肝硬変を患っていると、腹部のふくれた感じ、腹痛、全身のだるさなどを感じることがあります。診察すると肝腫大(かんしゅだい)(肝臓の腫(は)れ)、腹水(ふくすい)、上腹部の圧痛、くも状血管腫(けっかんしゅ)などがみられます。
 慢性の肝疾患を合併していず、肝細胞がんが単独で発生した場合は、右上腹部が痛み、診察で腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)を触れて発見されることがあります。
 進行した肝細胞がんでは、がんが破裂し、腹腔内(ふくくうない)に出血して発見されることがあります。

[検査と診断]
 診断には、採血し、肝臓のはたらき具合を調べる肝機能検査と、肝臓を画像に描き出して見る画像診断が用いられます。
●肝機能検査
 GOT(AST)、GPT(ALT)の値が高くなりますが、GOTの値のほうがより上昇します(解離現象)。胆道系酵素(アルカリホスファターゼ〈ALP〉など)の値も軽度に上昇します。
 しかし、合併する慢性肝炎や肝硬変でも、同じ結果がみられるので、この検査結果から肝細胞がんが存在するかどうかを判断することはできません。
●腫瘍マーカー
 体内に腫瘍が発生すると、血液中の値が高くなる物質があって、これを腫瘍マーカーといいます。
 肝細胞がんの約70%で、AFP(アルファフェトプロテイン)という腫瘍マーカーの値が高くなります。
 AFPの値が正常の際は、PIVKA(ピブカ)‐Ⅱという物質の値が高くなることがあります。
●画像診断
 肝細胞がんの診断には、つぎのような画像診断が行なわれます。
 超音波検査 無侵襲で、スクリーニング検査として第1に行なうべきものです。直径1cm前後の腫瘍を描き出すことができます。
 CT 肝細胞がんがあると、単純CTでは類円形の形として描きだされます。静脈に造影剤を注入し、時間を追って撮影するダイナミックCTを行なうと、肝細胞がん以外の腫瘤(こぶ)性病変と見分けるのに役立ちます。
 MRI 肝細胞がんとほかの腫瘍との鑑別に有効です。
 血管造影 肝細胞がんは肝動脈からの血流が豊富であり、造影すると濃く染まります。また、肝臓内の血管(門脈(もんみゃく)、肝静脈(かんじょうみゃく))内に「腫瘍塞栓(しゅようそくせん)」として波及しやすいのが特徴で、血管をつまらせることも少なくありません。
 したがって、肝動脈造影、門脈造影を行なうと、肝細胞がんかどうかが見分けられるだけでなく、がんの存在する位置、大きさなどがわかります。
 直径2cm以下で、単発した肝がんを細小肝(さいしょうかん)がんといいますが、血管造影を行なうと、このような小さながんも診断可能です。
 肝動脈造影とCTを併用するアンギオCTを行なうと、数mmの細小肝がんも発見できますし、血管造影の情報を数値化し、画像処理するDSAを行なうと、少量の造影剤の使用で鮮明な画像が得られます。

[治療]
 つぎのようないろいろな治療法があって、病状(臨床病期、クリニカル・ステージ(表「肝細胞がんの臨床病期(クリニカル・ステージ)」))に適した治療法が選択されます。
 がんが比較的小さく3個以内の場合には、ラジオ波焼灼療法(はしょうしゃくりょうほう)(「ラジオ波焼灼療法」参照)を行なうケースが増えています。
●肝切除術(かんせつじょじゅつ)
 がん病巣の発生している部位を切除します。切除する範囲は、病巣の位置、大きさ、数などによっていろいろです。完治が望める治療ですが、実施できるケースは、そう多くはありません。肝細胞がんでは、肝硬変を合併していて、肝臓を切除すると、はたらきがさらに低下してしまうために切除できないケースが多いのです。
 切除が不可能な場合は、臨床病期に応じて、以下に述べる治療のどれかが選ばれることになります。
●TAE(経(けい)カテーテル肝動脈塞栓術(かんどうみゃくそくせんじゅつ))
 がん病巣を養う血液を送っている動脈の内腔(ないくう)を閉塞(へいそく)させ、がん病巣が栄養不足におちいって死滅するのを期待する治療法です。
 血管造影検査と同じ方法で動脈にカテーテルという管を入れ、目的とする肝動脈までとどかせ、血管を閉塞させる物質(塞栓物質)を注入します。
 正常な細胞にも血液がいかなくなりますが、正常な細胞は門脈の血液を利用できるので影響がおよびません。
 おもに臨床病期Ⅱ期に行なわれます。以下に述べるPEITとPMCTが併用されることもあります。
●TAI(肝動脈内抗がん剤注入療法)
 TAEと同じ方法で、目的とする肝動脈までカテーテルを入れ、がん病巣に抗がん剤を注入します。
 血管を閉塞させないので、TAEよりも発熱・肝機能障害などの副作用が少なく、幅広いケースに応用できます。
●PEIT(経皮的(けいひてき)エタノール注入療法)
 超音波検査で、がん病巣の位置を確認しながら、腹部の皮膚に針を刺し、エタノール(アルコールの一種)を注入、がんを死滅させる治療法です。
 直径3cm以下、3個以下の腫瘍がよい適応で、臨床病期Ⅱ~Ⅲ期の肝機能不良例にも行なえます。
●PMCT(マイクロウェーブ療法)
 超音波検査でがん病巣の位置を確認しながら、胸部か腹部の皮膚に誘導針を刺し、がん病巣近くまで入れます。つぎに内針を抜いた後、電極をがん病巣にむかって挿入し、マイクロ波を照射します。
 マイクロ波を照射すると、がん病巣自身が熱を発生させますが、この熱ががん病巣のたんぱく質を固まらせ、壊死(えし)へと導きます。経皮的、腹(胸)腔鏡下、開腹下などいろいろなアプローチの方法があります。
 適応は、PEITと同様です。
●化学療法
 若干の効果のみられる抗がん剤がいくつかあって、点滴静脈注射や皮下植え込み式リザーバーを用いて間欠動注(かんけつどうちゅう)(1週間注入し、1週間休薬)が行なわれることがあります。
●放射線療法
 肝細胞がんには有効ではありませんし、放射性肝炎がおこる危険もありますが、門脈をふさいでいるケースや骨に転移しているケースには有効で、行なわれることがあります。

出典|小学館
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