軽焼煎餅(せんべい)の略。糯米(もちごめ)を洗って20日ほど水に浸け、白砂糖を加えて餅(もち)に搗(つ)き、なまこ形につくってかき餅のように薄く切り、銅鍋(どうなべ)で焼く。また、糯米粉に砂糖を加えて水でこね、いったん蒸して糖蜜(とうみつ)を加え、麺棒(めんぼう)でのしてさまざまな形に切り、鉄板にのせて焼く。膨れて歯ざわりの軽やかなのが喜ばれ、江戸時代初期から流行した菓子である。『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』に「軽焼きを買いに他宗は通り抜け」とある。江戸・浅草の東本願寺裏の誓願寺門前で茗荷屋(みょうがや)九兵衛の売り出した軽焼を買いに行くのに、他宗旨の客は東本願寺境内を素通りし近道をしたという評判記である。このほか、麹町(こうじまち)三丁目横町桔梗(ききょう)屋の花軽焼、神田紺屋町山城屋のけし入り軽焼が『江戸町中喰物(くいもの)重宝記』にみえる。また『寛永発句帳』に「雪焼、氷焼は軽焼の白色なるをいうなるべし」とある。岡山県津山市の「初雪」などはそれであり、家に持ち帰ってから火鉢で焼く片餅(へぎもち)(生地種(きじだね)煎餅)であった。
[沢 史生]
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