農事直説(読み)のうじちょくせつ

改訂新版 世界大百科事典 「農事直説」の意味・わかりやすい解説

農事直説 (のうじちょくせつ)

現存する朝鮮最古の農書李朝第4代世宗の命により,鄭招,卞孝文(べんこうぶん)らが編纂,1429年に完成し,翌年刊行された。編纂の直接の目的は,南部朝鮮の先進的な農法調査・集大成し,それを北部地方に普及させることにあったが,水田における稲の直播き連作技術や,畑作の2年三毛作等,朝鮮独特の農法を初めて成文化した点で画期的な意義をもつ。以後の李朝農書に決定的な影響を与えた。
農書[朝鮮]
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「農事直説」の意味・わかりやすい解説

農事直説
のうじちょくせつ
Nong-sa-jik-sǒl

朝鮮,李朝の農書。世宗 11 (1429) 年に鄭招 (?~34) らが王命によって編纂。2巻,2冊。世宗の農本政策の所産ともいえるもので,各地方の観察使を通じて,経験豊富な農民から農業技術を聞いたものを集め編纂したもの。

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世界大百科事典(旧版)内の農事直説の言及

【農書】より

…(2)李朝前期には従来の中国農書の単なる受容を脱却して,朝鮮独自の農法を体系化しようとする政策が追求されるにいたる。その結果,世宗の命により編纂されたのが《農事直説》(1430初刊)であり,また京畿道果川地方の農業の様相を記した《衿陽雑録》(姜希孟著,1492)であった。とくに前者は,水田直まき連作技術,畑作の2年三毛作などを集成し,以後の農書に大きな影響を与えた。…

【李朝】より

…こうした地主制の拡大は,人頭数を基準とした力役賦課(計丁法)の存続を困難にし,1420年には所有地を基準とする力役賦課(計田法)に変えられた。この変化は,《農事直説》(1429)にみられるような水稲の連作や施肥による集約的農業の発展=生産力の発展とあわせて,奴隷制的関係から農奴制的関係への移行過程を示すものではあったが,土地基準とはいえ,労働力そのものを徴発するありかたは変わっていなかった。しかも李朝初期には,そうした力役の比重のほうが生産物収取よりもはるかに大きく,それらの点で,李朝初期には古代的要素がなお根強く残されていた。…

※「農事直説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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