農業共同体(読み)のうぎょうきょうどうたい(その他表記)la commune agricole フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「農業共同体」の意味・わかりやすい解説

農業共同体
のうぎょうきょうどうたい
la commune agricole フランス語
Agrargemeinde ドイツ語

世界史上、一般に原始共同態の「最後の段階」として現れる農耕生活中心の、したがって土地占取関係に基づく近隣社会をさし、近代以前の諸社会の一般的な経済土台をなすものである。そこには、原始共同態特有の、集団の原生的性格と土地占取の共同的性格とが、なお深く刻み込まれていると同時に、成員の「人間的活動」の発達程度に応じて、彼らの私的個体的成長と私的個別的土地占取の増大という、「人為的性格」もまた多かれ少なかれ含まれている。この二要素(原始的共同性と私的個人性)は本来異質なものであったから、研究史上、農業共同体の「固有の二元性」(マルクス)とよばれ、両者がはらむ矛盾のあり方に基づいて、農業共同体を類型的に区別することが試みられてきた。すなわち、土地の共同占取に対する私的占取の発達、土地配分原理にみる実質的平等から形式的平等への推転、優れて呪術(じゅじゅつ)的血縁制として現れる原始的集団性の克服と私的個人的社会関係の発達、共同体の経済と倫理にみる「内」と「外」との原理的二重性の克服、等々の進展程度と態様からみて、大づかみに「アジア的」「古典古代的」「ゲルマン的」の三形態を区別することが、研究上、有力視されている。これらは、それぞれ独自な完結した構造を有する並列的類型であると同時に、「固有の二元性」進展の諸段階を示現するものとして、発展的にもとらえられるものである。

[田中豊治]

『ソ連・ドイツML研究所編、全集刊行委員会訳『ヴェラ・ザスーリチの手紙への回答の下書き』(『マルクス=エンゲルス全集 第19巻』所収・1968・大月書店)』『『共同体の基礎理論』(『大塚久雄著作集 第7巻』所収・1970・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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