改訂新版 世界大百科事典 「近江のお金」の意味・わかりやすい解説
近江のお金 (おうみのおかね)
〈お兼〉とも書く。鎌倉時代の初め,近江国海津にいたという遊女で,大力無双であったと伝える。《古今著聞集》に,物に驚き狂い走る馬の差縄を高下駄で踏み,これを留めたところ,その足駄は足首まで砂に埋まった。また手をさし出し5本の指1本ずつで弓を張り,一度に5張を張ってみせたほどで,大の男が5,6人かかってもその怪力にはかなわなかった,との記述がみえる。1813年(文化10)6月江戸森田座初演の《茲(またここに)姿八景》(通称《晒女(さらしめ)》《お兼》)は近江八景になぞらえた八変化舞踊で,近江のお兼はその中の一役,独立して演じられる。〈色気しらはの団十郎娘……〉云々の歌詞どおり,大力女の色気で踊るのがヤマとなっている。作詞は2世桜田治助,初演の演者は7世市川団十郎であった。
執筆者:小池 章太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報