日本大百科全書(ニッポニカ) 「迷チョウ」の意味・わかりやすい解説
迷チョウ
めいちょう
stray butterfly
その地域にすみついていない昆虫のチョウが、ほかの地域からやってくる場合に、これを迷チョウ(または偶産チョウ、偶産種)という。日本の迷チョウのなかには、ほとんど毎年、南方から日本本土にやってきて、初夏から秋にかけて幼虫が発生して繁殖をするものもあるが、冬の寒さに耐えることができず死滅して、年を越すことはない。その代表的なものはメスアカムラサキ、リュウキュウムラサキ、アオタテハモドキ、ウスイロコノマチョウなどで、これらを候チョウとよぶこともある。
毎年ということではないが、ときに南方より北上して高温期に一時的に発生するウラナミシロチョウのようなものもあるし、きわめてまれにしか日本にやってこない種(日本での発見例が1、2例しかないもの)までさまざまの段階がある。近年では、その地域にすみついていないチョウを含め、すべて迷チョウとよぶのが普通である。
日本に飛来する迷チョウは熱帯ないし亜熱帯性のものが多く、寒地性のものはきわめて少ない。これは春から夏にかけて南方からの季節風が日本に吹き付けると(台風もある)、日本の気温も上昇して迷チョウを受け入れられる気候的条件になっているためである。日本で発見される迷チョウは約50種、その発見例は琉球(りゅうきゅう)諸島にもっとも多い。
[白水 隆]