通物(読み)とおりもの

精選版 日本国語大辞典 「通物」の意味・読み・例文・類語

とおり‐もの とほり‥【通物】

〘名〙
① 通過するもの。流星、鬼火、ひとだまなど。
人情本・春色恵の花(1836)初「何か怪物(トフリモノ)でもするのでございやせう」
③ 名の通っていること。有名なもの。
※雑俳・大黒柱(1713)「御親父の幕ぎらひなはとをり物」
④ どこでも通用しているもの。
※みゝずのたはこと(1913)〈徳富蘆花落穂の掻き寄せ「詐(うそ)貨幣(かね)と同様天下の通り物である」
書画骨董で、本物としても通用し得るにせ物。

とおし‐もの とほし‥【通物】

〘名〙 料理屋などで、酒のさかなとして最初に出す簡単な食べ物。とおし。おとおし。とおしざかな。
日本橋(1914)〈泉鏡花三六「一度讚めたが、以来お鹿の自慢でね、吃と通しものに乗って出ます」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の通物の言及

【資財帳】より

…伽藍とは建物,縁起とは創立の由緒のことをいう。道具類はその使用目的によって,仏物(仏分ともいい,仏菩薩の供養に用いられるもの),法物(法分ともいい,箱,机,櫃など仏典保持,供養に使用されるもの),僧物(僧侶が生活するために用いたもの),通物(通分ともいうが,仏・法・僧3者共通して使用するもの)に大別して記載されている。もともと資財帳は奈良時代,国家によって仏教が保護されていたとき,諸寺に対して年々提出させていたもので,寺院の財産が悪僧によって消費されるのを防ぐためであった。…

※「通物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」