平安中期から南北朝初期にかけ,内裏・大寺社などの造営・修理を負担した国。功国ともいう。平安中期以降,律令制が崩れ朝廷の財政が行き詰まってくると,朝廷はそれまで朝廷が行っていた内裏再建や,多く律令制収税体系にたよっていた大寺社の造営・再建を,独立建築物ごとにいくつかの国に分担させるようになった。これが造国で,一つの殿舎等を一部ずつ数ヵ国に分担させた場合にはこれを所課国といった。造国方式がとられた最初は,973年(天延1)に焼亡した薬師寺再建のときとされ,以後平安後期から鎌倉時代にさかんに用いられた。平安後期以降,造国に指定されるとその国司は国内の公領・荘園をとわず造営費の臨時課徴を朝廷から認められ,また原則として朝廷への恒例の貢納物納入を免除された。平安末期に知行国がその数を増すと知行国で造国となることが多くなった。なお,鎌倉期になると1寺院,1神社の造営修理に1造国(多くは当該寺社に与えられた知行国で,造営料国とも呼ばれるようになる)を充てることが多くなり,平安期の造国の意味とちがいをみせるようになる。
執筆者:小山田 義夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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