造果保(読み)ぞうかほ

日本歴史地名大系 「造果保」の解説

造果保
ぞうかほ

和名抄」所載の賀茂郡「造果郷」に由来し「造賀保」とも書く。範囲は現高屋たかや造賀ぞうかにほぼ一致すると考えられる。実態は不明であるが皇室領で、東方西方に分れ、康応元年(一三八九)に「新院御方別納御料所」とされ、合わせて二四貫文が京都に送られることになっていた(同年四月三日付「厳島社神主藤原親詮請文案」厳島野坂文書)。建武三年(一三三六)九州に敗走した足利尊氏が再び東上する途次、厳島神社に参詣した際出した同年五月一日付寄進状(厳島文書御判物帖)が初見で、造営料所として同社に造果保を寄進している。ところが文和三年(一三五四)小早川氏の一族小泉氏平が幕府から勲功の賞として造果保を預けられたため(小早川家文書)、厳島社と小泉氏の間で紛争が生じた。幕府は延文二年(一三五七)下地を厳島社に渡付するよう命じておきながら(厳島文書御判物帖)、応安元年(一三六八)には小泉氏の訴えで厳島社側の押領を排して小泉氏に渡せとするなど(小早川家文書)朝令暮改を繰返して(応安三年一〇月一六日付「多々良弘慶請文案」野坂文書)混乱を深めた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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