改訂新版 世界大百科事典 「運河狂時代」の意味・わかりやすい解説
運河狂時代 (うんがきょうじだい)
鉄道発達以前,つまり産業革命初期のイギリスで,基幹的な輸送手段として全国に運河網が展開されたことをいう。ヨーロッパ大陸やアメリカにも似た現象がある。沿岸航行と河川航行が盛んだったイギリスでは,むしろ運河建設は遅かったが,1761年に完成したブリッジウォーター運河が,ワースリーからマンチェスターへの石炭積出用として大成功して以来,産業革命の中心となったランカシャーやミッドランドをはじめ全国に運河が掘られた。ミッドランドのトレント渓谷とランカシャーのマージー川を結ぶ大幹線運河Grand Trunk Canal(別名,トレント・マージー運河)を軸として,セバーン,テムズ両川などとも連絡したので,主要な都市がことごとく内陸水運で結ばれたのである。運河は,法によって許可された会社組織で建設,運営された。1793年以降,軍需品輸送をあてこんだブームが再燃し,第2次運河狂時代が現出するが,1830年代以降,鉄道輸送の比重が増すにつれてふるわなくなった。
執筆者:川北 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報