日本大百科全書(ニッポニカ) 「選挙放送」の意味・わかりやすい解説
選挙放送
せんきょほうそう
広く同時に周知することができる放送の機能を生かして、選挙に関する情報を伝えること、またその種の番組。狭義には公職選挙法(昭和25年法律100号)に基づいて、日本放送協会(NHK)および一般放送事業者(いわゆる民間放送)が行う政見放送と経歴放送をいう(同法150条、151条)。しかし一般的には、各放送局が自主的に編成する選挙キャンペーン、予想、開票速報、政党座談会、そのほかさまざまの選挙関係の解説、評論などの番組まで含めて選挙放送といわれることが多い。広義の選挙放送は局間競争の激化で、ますます多様化しつつある。
選挙放送は放送が広く普及した今日の社会では、有権者の意思決定に与える影響も大きいので、世界各国とも、すべての候補者の公平な扱いに配慮して、さまざまな取決めを定めている。日本で今日のような選挙放送が行われるようになったのは、第二次世界大戦後初の衆議院議員選挙(1946年4月)からで、このときすでにラジオ全国中継による政党放送とローカル放送による立候補者の政見放送が実施されている。新憲法下、新たに法的義務が定められ、国の費用負担によって選挙放送が行われるようになったのは1949年(昭和24)1月の衆議院議員選挙からである。なお、選挙放送のうち政見放送の放送内容については、それを放送する放送局は、通常の放送番組の場合とは異なり、責任を直接問われない。一方で候補者は政見放送としての品位を保持すべきことが法で定められている。
[後藤和彦]