遺伝性非ポリポーシス性大腸がん(読み)いでんせいひポリポーシスせいだいちょうがん(英語表記)Hereditary non-polyposis colon cancer(HNPCC)

六訂版 家庭医学大全科 の解説

遺伝性非ポリポーシス性大腸がん
いでんせいひポリポーシスせいだいちょうがん
Hereditary non-polyposis colon cancer(HNPCC)
(遺伝的要因による疾患)

どんな病気か

 家族性大腸ポリポーシスでないのに遺伝的に大腸がんが発生する病気です。常染色体優性遺伝です。大腸の右側にがんが発生しやすい傾向があります。大腸以外に、子宮内膜(しきゅうないまく)がん、胃がん卵巣がん尿管腎盂(じんう)がんなどが発生することがあります。

 発症年齢は20歳以上で、平均45歳です。日本人における頻度は全大腸がんの3~10%といわれています。

原因は何か

 MSH2、MLH1(ミスマッチ修復遺伝子群)の遺伝子変異です。そのほか、MSH6、PMS1、PMS2なども知られています。

検査と診断

 家族歴などの情報から、遺伝性の疑われる大腸がんの患者さんに遺伝子変異の見つかる割合は、MSH2とMLH1を合わせて40~80%です。もし、遺伝子変異が見つかれば、多発がん、他臓器がんのリスクが高いことがわかるので、早期発見・早期治療につなげることができます。

 同じ変異をもつ血縁者で現在発症していない人について、一生で大腸がんにかかるのは80%程度、子宮内膜がん(女性)は30%程度といわれています。

 発症前遺伝子診断易罹患性(いりかんせい)診断)の適切な年齢は20歳以上です。

治療と管理方針

 予防的手術は日本ではまだ一般的ではありませんが、2回め以降のがんに対しては大腸亜全摘(だいちょうあぜんてき)(大腸を直腸下部を残して切り取る)が考慮されることもあります。

 未発症で遺伝子変異をもつ人や、家系内でリスクが高いと考えられる人については、20歳以上で大腸がん、30歳以上で胃がん子宮内膜がん・卵巣がん、尿路がんに対しての検診を年に一度受けることをすすめます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android