日本大百科全書(ニッポニカ) 「部落有林」の意味・わかりやすい解説
部落有林
ぶらくゆうりん
町村の一部である部落(集落)住民が総有する林野。所有形態(名義上)の現況は、(1)市町村、財産区など公有林となっているもの(=入会(いりあい)権、旧慣使用権がある林野)、(2)社寺、共同、団体、個人などの私有林となっているもの(=慣行共有)とに分かれる。もともとは村持山(むらもちやま)(入会山)であるが、明治以降の入会権解体・市町村直轄化政策とこれに対する地元住民の対抗との妥協の産物として複雑な所有形態をとるに至ったものである。1966年(昭和41)成立の「入会林野近代化法」も、入会権ならびに旧慣使用権の「近代的」権利関係(所有権、地上権等)への解消発展をねらったものである。この近代化事業によって2011年度(平成23)末までに整備された林野は約69万ヘクタールで、生産森林組合への法人化が面積比で54%ともっとも多く、ついで個別利権化が38%となっている。しかし、いまだ約65万ヘクタールの未整備林野が残存していること、整備後も高度利用が進まないものが多いなど、近代化政策のあり方の再検討が迫られている。
[野口俊邦]