私有林(読み)シユウリン

デジタル大辞泉 「私有林」の意味・読み・例文・類語

しゆう‐りん〔シイウ‐〕【私有林】

個人の所有する森林

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精選版 日本国語大辞典 「私有林」の意味・読み・例文・類語

しゆう‐りんシイウ‥【私有林】

  1. 〘 名詞 〙 個人が所有する森林。国有林公有林以外の森林。
    1. [初出の実例]「森林は〈略〉御料林、国有林、公有林、社寺有林及私有林とす」(出典:森林法(明治四〇年)(1907)一条)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「私有林」の意味・わかりやすい解説

私有林
しゆうりん

個人、会社、社寺、各種団体・組合などの所有する森林で、国有林、公有林以外の総称。2007年(平成19)時点の日本の私有林面積は1454万ヘクタール、総森林面積2510万ヘクタールの約6割を占める(『森林・林業白書』2012年版)。世界的には国・公有林の比率の高い国が多いが、日本は北欧諸国、フランス、アメリカなどともに私有林比率が高い。私有林の1事業体当りの平均所有規模は、日本はフランスと近似し、アメリカは日本の6倍、北欧諸国は15倍もの規模となっている。

 私有林の所有関係が確定されるのは、1873年(明治6)に開始される地租改正によってである。江戸時代は、スギヒノキなどの有用林は幕藩有林として管理され、集落を取り巻く里山山林原野は入会(いりあい)地として農民が利用していた。地租改正は、幕藩有林の多くを官林とする一方、農民入会地などの山林原野に対し地券(所有権)を交付する方式をとった。地券交付においては、明治政府は江戸時代に勝るとも劣らない地租の確保を図るために、山林原野の利用の有無よりも地租の負担能力の有無を優先させ、財力のある地主層などにより多くの地券交付を行った。この明治期に生み出された私有林は、1940年代後半に行われた農地改革においても改革の対象とされずに今日に至っている。そのため、私有林は所有規模の格差が大きく、上は2万ヘクタール以上の所有から、下は1ヘクタール未満の農家林なども存在する。なお、会社有林(社有林)は、紙・パルプ産業の所有山林が代表的なものであるが、紙・パルプ需要の急増する1950年代以降に山林の集積を行ったケースが多く、1社で8万ヘクタール(東京都の全森林面積)にも及ぶ会社有林を所有する会社も存在する。私有林の利用は、1960年代までは農業用の堆肥(たいひ)や木炭・薪(まき)の採取に多く利用されてきたが、1970年代以降はそうした利用がほとんど姿を消した。また、木材需要の急増する1950年代からは、全国各地でスギ・ヒノキなどの造林が大規模に行われ、建築用の木材資源を造成してきた。しかし、1970年代以降、外材の大量輸入が行われ、採算がとれないままに造林地の維持管理が困難な状況に置かれている。

[山岸清隆]

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改訂新版 世界大百科事典 「私有林」の意味・わかりやすい解説

私有林 (しゆうりん)

私有の森林のことで,国有林公有林以外のものの総称。私有林と公有林を合わせて民有林という。日本の森林面積の約2/3を占めている。私有林の所有者は林家(林業を経営する世帯),社寺,会社などで,ほかに共同所有,慣行共有もある。日本の私有林の特徴は小所有のものが多いことで,林家数250万戸(うち農家が160万戸)のうち10ha以上を所有するものはわずか13万戸にすぎない(1990)。このように零細規模であるうえに1人の所有森林は十数個の小団地に分散し,1団地の面積が0.1haから大きくても1haくらいのものが多いことも特徴である。こうした所有状況となったのは農家の有する森林がもともとは入会地(入会)で草刈場であったことに由来する。明治の初期からたびたび分割され,個人所有地となったが,その際所有が偏らないよう地味の良い場所,悪い場所,普通の場所のそれぞれをさらに細かく分けることが多かった。これらの農家所有林はその後,売買,譲与などにより所有者が移った。とくに1960年以降の高度成長期には地価が高騰し,デベロッパーによる買占めが進んだ。ゴルフ場,宅地,レジャー施設などの実需のほか,投機を目的とする投資も多く,私有林という名目はあるが,林業はまったく行われていない森林も増えつつある。私有林の管理はほとんど所有者が行い,所有者が遠隔地に住む場合に山守が管理することもみられたが,最近ではそれも行われなくなっている。とくに投資目的の所有者では管理を放棄しているのが実情で,森林の荒廃が進み,資源,環境保全の上からも問題となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「私有林」の意味・わかりやすい解説

私有林
しゆうりん
private forest

個人や会社,社寺の所有する森林。森林法では国有林以外の所有形態を民有林と規定しているが,民有林には都道府県有林,市町村有林,財産区有林などの公有林と,会社,社寺,個人の所有する私有林の別がある。日本の総森林面積は 2521万 2000haであり,そのうち私有林は 58%を占め (1990) ,その 90%が個人有であるが,うち 20ha以上の森林を経営する主業的林業者は2%以下で,大部分は農家の副業的なものである。社寺有は財源を兼ねながら社寺の環境を保存する風致林的な役割を果している。しかし,近年,林業の採算性は低迷を続けており,国産材の生産の促進などの問題もあることから,林業経営の合理化と生産向上を目指し生産体制整備などが急務とされており,会社および共同保有形態も増加してきている。

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林業関連用語 「私有林」の解説

私有林

個人、会社、社寺、共同(共有)、各種団体・組合等の所有する森林をいう。

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世界大百科事典(旧版)内の私有林の言及

【百姓林】より

…百姓林が領主の山林台帳や村明細帳に個別に登記されるようになるのはおおむね中期以後で,公認された百姓林には地積と立木数に応じた山運上が課されるほか,有用樹木の無断伐採が禁じられた。また営利目的で成木を伐採した場合には相当の収益税が徴され,伐採跡への植樹を義務づけるのが一般的であったから,個人の占有とはいっても,領主の林野統制外にある完全な私有林ではなかった。【所 三男】。…

【民有林】より

…日本の森林面積約2500万haのうち約1730万haを占めている。このうち私有林が1460万ha,残りが公有林である(1995年3月末現在)。民有林の呼称は1951年の森林法によって生まれたもので,政策上の用語である。…

【林業経営】より

…日本の森林は経営形態別に国有林公有林私有林に分けられる(公有林と私有林を合わせて民有林という)。国有林は森林総面積の3割に達する。…

※「私有林」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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