重鉱物分析(読み)じゅうこうぶつぶんせき(その他表記)heavy mineral analysis

改訂新版 世界大百科事典 「重鉱物分析」の意味・わかりやすい解説

重鉱物分析 (じゅうこうぶつぶんせき)
heavy mineral analysis

堆積岩に含まれる重鉱物分離し,その解析によって地層の諸性質を検討する方法。堆積物および堆積岩の構成鉱物の中で比重2.8以上のものを重鉱物と呼び,それ以下のものを軽鉱物と呼ぶ。堆積物などの多くの部分を占めるのは石英,長石類などの軽鉱物であり,重鉱物の含有量は一般に少量である。このため分離濃縮をしなければならない。その方法は,軟らかい堆積物であれば水洗後,また固結した場合と堆積岩であれば粉砕して適当な粒度にそろえたのち,重液を用いて重鉱物の濃縮・分離を行う。重液としては有機物では四臭化エタン(比重2.9),ヨウ化メチレン(比重3.5),無機物ではツーレ溶液(ヨードカリとヨード水銀の混合水溶液で濃度調整を行い比重3.1~3.2とする)などが多く使用される。得られた複数種以上の重鉱物の混合物は必要があれば双眼顕微鏡下で分離を行う。このようにして分離された重鉱物はその種類を明らかにし,さらに鉱物ごとの比率,それぞれの鉱物種ごとの形状,結晶の晶相晶癖,摩耗度,色彩などの特徴を明らかにする。これらの結果を使って重鉱物を含有していた地層の分帯や対比を行う。さらにその地層,堆積物の重鉱物とそれらの供給源と推定される岩石の重鉱物との対比を行い,供給源を明らかにする利用法もある。また,それぞれの堆積物,堆積岩の特徴的な重鉱物の組合せをその重鉱物組成と呼ぶ。それは堆積物の供給地の地質,岩石によるほか,堆積物が供給され堆積するまでの地質現象を記録していることが多い。すなわちその間の風化作用,選別作用,分解や表面の溶食作用などである。また堆積後の続成作用も記録されていることがあり,堆積後の地質現象を推定する手がかりとなることもある。一般に堆積岩の重鉱物組成は地質時代の古い場合は単純であるが,若くなるにしたがい複雑となる傾向がみられる。これは古い地層内では不安定な重鉱物が分解消滅する現象によるものと考えられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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