改訂新版 世界大百科事典 「溶食作用」の意味・わかりやすい解説
溶食作用 (ようしょくさよう)
corrosion
雨水や河流,地下水などによって岩石が溶解され,浸食される現象で,水による化学的な風化・浸食作用の総称。とくに二酸化炭素CO2を含む水は,石灰岩のような方解石CaCO3を主成分とする岩石を次式で示す反応で溶解する働きがある。
CaCO3+H2O+CO2⇄Ca2⁺+2HCO3⁻
この作用は石灰岩台地において,カルスト地形と呼ばれる特殊な景観をつくり出す重要な営力として働く。一般に,石灰岩の溶解速度はCO2を多く溶存しうる低温の水の方が早いので,熱帯地方よりも寒冷地方で溶解量が多いと考えられがちである。しかし実際には雨の多い,植生の豊かな,暖かい地方の方が土壌中のCO2や植物起源のCO2も多く加わって,多量の水が供給されるので,石灰岩の溶解量は大きいのである。
石灰岩台地では石灰岩の表面にさまざまの溶食溝が刻まれ,ドイツ語でカレンKarren,フランス語でラピエlapiésと呼ばれ,このような石灰岩の露岩が広くあらわれた溶食地形をドイツ語でカレンフェルトKarrenfeldという。また地中に浸透した地下水によって,石灰岩の割れ目や節理,層理,断層などの弱線に沿って溶食が進み,地表の低下や陥没のため,ドリーネdolineまたはシンクホールsinkholeと呼ぶすり鉢状の窪地が生じ,一方,地下には大小の石灰洞(鍾乳洞)が形成される。これに似た溶食地形は石灰岩のほか,白雲岩や白亜,セッコウ(石膏),岩塩などの岩石の所でも生じる。
執筆者:三浦 肇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報