風化作用(読み)ふうかさよう(その他表記)Weathering; Verwitterung

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風化作用」の意味・わかりやすい解説

風化作用
ふうかさよう
Weathering; Verwitterung

地表の水,空気などの働きで,地殻表面が破壊・劣化する現象。
(1) 物理的風化作用 地殻表面の岩石が風,水などの働きで割れたり細粒化したりする現象。水がしみこみ,日中と夜間の温度差により膨張収縮を繰り返すとタマネギ状に割れ目が入る(タマネギ状風化)。氷の結晶成長では,-20℃で結晶圧が最大(2t/cm2)となり,岩石強度より大きくなるため,氷河期などに地下水が凍結すると岩石は凍結破砕を起こす。地表付近(深さ 100mくらいまで)で,封圧が岩石強度より強いところでは凍上現象により水平な割れ目ができ,それ以下で結晶圧が岩石強度より強い場合,岩石は数十cm大に割れ,塊状となる。氷河が発達した地域には凍結割れ目はあまり顕著ではないが,日本など氷河が発達しなかった地域では岩石の凍結破砕が著しい。これらが地表に出ると,岩塊原 Felsenmeerや岩塊流 Felsenstrom; rock-glacierができる。
(2) 化学的風化作用 地表から空気中の二酸化炭素(CO2)が地下水に溶け,岩石が反応して変質し,地下水滞水域全体が平衡に達するプロセス。地表付近は酸性pH=4.7)で,ケイ酸塩鉱物からシリカを溶かし,カリウム(K),ナトリウム(Na)などの金属イオンが溶脱して地下水滞水域下方に移動する。地下水は中性から弱アルカリ性(pH=8~9)に変化し,その pH値に応じた粘度鉱物・水酸化物が沈積する。地下水滞水域全体の変質した部分を風化殻 Weathering crustというが,花崗岩デイサイトなどでは,地表から地下深部にかけておおよそ次のような変質鉱物帯ができる。

地表赤マサギブス石〔Al2O3~Al(0H)3〕,赤鉄鉱〔Fe2O3~Fe(OH3)〕

白マサカオリン,ハロイサイト Al4〔(OH)8・Si4O10〕・4(H2O)4


オニイタ〔(Fe,Mn)(OH)8

黄マサモンモリロナイト(AL,Mg)2〔(OH)2・Si4O10〕・Na0.3(H2O)4

弱風化帯斜プチロル沸石〔(Na,K)2Al2Si7O18・6(H2O)〕


オパール(SiO2)
地下深部未風化花崗岩


風化の反応は増進的,非可逆的であるから,気温や CO2濃度が高ければ反応は進むが,低温,乾燥の状態では反応は停止し,準安定 metastable状態にある。現在地表でみられる厚さ 200mもある大規模風化殻(深層風化殻)は,1500万~1000万年前の熱帯雨林気候当時にできたもので,気候的ポテンシャルがこれをこえないかぎり,風化の反応は進行しない。たとえば日本の花崗岩地帯に発達する厚いマサ(真砂)は,1500万~1000万年前の高温多雨気候下にできた風化殻で,現在の気候条件では風化は進行しない。この風化殻ができたときより気温や CO2濃度が高くなり,風化のポテンシャルが上がれば,風化は進行することになる。

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改訂新版 世界大百科事典 「風化作用」の意味・わかりやすい解説

風化作用 (ふうかさよう)
weathering

地表の岩石が風雨や日射にさらされて変質される作用をいう。その場合岩石はもともとの位置を変えることなく,岩体の周囲から影響を受けて分解しやすい状態になったり,破壊されたり,脆弱にされたり,着色されたりする。風化には機械的風化作用mechanical weatheringと化学的風化作用chemical weatheringとの2種がある。機械的風化作用は物理的風化作用ともいい,日射と夜間の冷却のような温度変化により岩石・鉱物に差別的膨張収縮が起きたり,融解水が割れ目にしみ込み凍結膨張して楔(くさび)作用を及ぼしたりして,その結果岩石が破砕される作用をいう。後者は霜による凍結破砕作用frost shatteringあるいは霜による風化作用frost weatheringともいう。飛驒山脈黒部五郎岳の山頂などの高山の山稜や山腹に見られる岩海(岩塊原)は,基盤岩が機械的風化作用を受けたために生じた例である。この種の風化は乾燥地,半乾燥地,氷河地域や周氷河地域など寒冷地に著しく見られる。温暖湿潤地域では化学的風化産物と重なって目だちにくくなるが,崖や溶岩原のような裸岩地ではときおり認められる。

 花コウ岩の分解生成物のマサ(真砂)またはマサ土も機械的風化産物である。岩石の鉱物組成や構造によって破砕される状況は異なり,花コウ岩のような粒状結晶構造の場合はとくに分解されやすく,岩体から不連続的に砂粒へと変化する。マサは岩石としての固結を失った風化砂層で厚さは30m以上に達することもあり,このような場合深層風化と呼ばれる。多摩川上流部柳沢峠付近の石英セン緑岩地帯や中国山地の花コウ岩地帯など,一般に花コウ岩質岩石の山地にマサ土の分布はかなり明瞭である。

 化学的風化作用は岩石が空気や水に接触して酸化,炭酸化,水和作用や加水分解,溶解をうけて変質分解し,洗脱される成分と残留成分とに分けられる作用である。一般にいう粘土化の現象は化学的風化産物とみてよい。気温が高く水の浸透しやすい地質ほど化学的風化を受けやすく洗脱が進む。残留成分は再結合して粘土鉱物をつくるが,風化の進行に伴う段階的変化を風化系列と呼ぶ。火山ガラス→アロフェン→ハロサイト→メタハロサイト,雲母→イライトバーミキュライトの系列が日本では知られている。礫の表面が酸化されて赤色を呈しているような場合は風化皮膜(酸化皮膜),赤色風化殻と呼ばれたりするが,一方,土壌の表層から基盤の風化部分までを含めて風化殻または風化層と呼ぶ。砂礫層の風化層の中には〈くさり礫〉と呼ばれるほど,化学的風化の結果変色して弛緩し,力学的強度を失っているものがある。機械的風化によって破砕分解が進むほど化学的風化は促進されやすくなる。
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百科事典マイペディア 「風化作用」の意味・わかりやすい解説

風化作用【ふうかさよう】

岩石が地表で分解,変質していく過程。気温の日変化や季節変化,割れ目の中の水の凍結・融解,植物の根の侵入等による機械的破砕作用により細片化することを物理的風化作用という。空気中の酸素,雨水,その中に溶出した生物起源の二酸化炭素,有機酸等により造岩鉱物が分解,溶解し,可溶成分は洗脱,難溶成分(SiO2,Al2O3,Fe2O3等)が残留富化する過程を化学的風化作用という。最終的には角礫(れき),砂,粘土の混じった砕屑(さいせつ)物が形成される。気温が低い高緯度や高山,気温の変化の大きい乾燥地域では物理的風化作用が,気温が高く雨量の多い地域では化学的風化作用が卓越する。

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岩石学辞典 「風化作用」の解説

風化作用

露天化作用,霉爛(ばいらん)などは同義.大気や風雨に晒されたための,物理的および化学的な岩石の分解作用の総称[Merrill : 1897].霉爛の“ばい”は雨中の暑気,梅雨の意味.

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世界大百科事典(旧版)内の風化作用の言及

【変成作用】より

…古い鉱物が新しい鉱物に置き換わるときも,古い鉱物が水分にわずかずつゆっくりと溶け,代わって新しい鉱物がゆっくりと成長している。このようなプロセスは変質作用や風化作用の場合とよく似ている。
[変成作用のおもな種類]
 (1)熱変成作用 おもに熱の作用によって起こる変成作用のこと。…

※「風化作用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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