朝日日本歴史人物事典 「野呂天然」の解説
野呂天然
生年:明和1(1764)
江戸後期の漢蘭折衷医。江戸生まれ。名は真空,通称は雄,号は無量。官途を志し地方役人になったが,出世の道をはばまれて医に転じる。市井に隠れて蟄居し,和漢洋の医書に親しむ一方で,生獣・刑屍をしばしば解剖して知見を深めた。のち京都に上って著訳述,医療に専念。難解な術語を造語した解剖書『生象止観』や,すぐれた内科診断書『方鏡独見』を著して独自の学風に達したが,性格が狷介・剛直で当時の医界に容れられず,その学統は続かなかった。京都で没し,新京極・西光寺に葬られた。<参考文献>阿知波五郎「野呂天然について」(『医譚復刊』23号)
(宗田一)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報