金酸(読み)きんさん(英語表記)auric acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金酸」の意味・わかりやすい解説

金酸
きんさん
auric acid

HAu(OH)4と書かれる物質をいうが、このものは実際に遊離して取り出されてはいない。しかしこのものの元となる水酸化金(Ⅲ)Au(OH)3は、両性であるが酸性のほうが強く、アルカリに溶けて金酸塩をつくるので、これを金酸ということが多い。Au(OH)3をHAuO2・H2Oのように書くこともある。たとえば、水酸化金(Ⅲ)を熱水酸化カリウム水溶液に溶かし濃縮するとK[Au(OH)4]・H2Oの淡黄色針状晶が得られ、熱水酸化ナトリウム水溶液では同じようにしてNa[Au(OH)4]の淡緑色結晶が得られる。金酸塩溶液は一般に不安定で、熱、光などにより金を析出して分解しやすく、固体には有機物と熱すると爆発するものもある。

[中原勝儼]

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化学辞典 第2版 「金酸」の解説

金酸(塩)
キンサン
auric acid(aurate)

HAuO2・H2O(247.99).水酸化金(Ⅲ)Au (OH)3は両性であるが,むしろ酸性のほうが強いため,金酸の俗称がある.Na[AuCl4]・2H2Oの水溶液に水酸化アルカリを加えると得られる.水にほとんど不溶の黄赤色の粉末である.濃酸や熱アルカリ水溶液に可溶.空中に固体を放置すると,室温では徐々に,100 ℃ ではすみやかに水を失い,AuO(OH),さらにAu2O3にかわる.
金酸塩は酸化金(Ⅲ)または水酸化金(Ⅲ)を水酸化アルカリ溶液に溶かすと得られる.アルカリ金属塩の水和物M Au O2・2H2Oは,形式上金酸であるが,実際はテトラヒドロキソ金(Ⅲ)酸塩M[Au (OH)4]である.たとえば,NaAuO2・2H2OはNa[Au(OH)4],KAuO2・3H2OはK[Au(OH)4]・H2Oなどである.Auの水酸化物も Au塩と水酸化アルカリとの反応で得られ,両性であるが,不安定で純粋なものは単離できない.[別用語参照]テトラヒドロキソ金(Ⅲ)酸塩

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「金酸」の意味・わかりやすい解説

金酸 (きんさん)
auric acid

水酸化金(Ⅲ)Au(OH)3の俗称。塩化金(Ⅲ)水溶液に水酸化アルカリを加えるか,炭酸アルカリを加えて加熱するとAu(OH)3黄褐色沈殿が生成する。これを十分に洗浄後,乾燥するとだいだい色ないし黄土色粉末となりAuO(OH)の組成のものが得られる。これはAu(OH)3の脱水したものとみなされる。これらは見かけは水酸化物であるが,両性を有し,酸としての性質のほうが強いのでAu(OH)3を金酸と呼び,またこれから導かれる塩(KAuO2・2H2O,Ca(AuO22・6H2Oなど)は金酸塩と呼ばれる。これは,金の酸化力が大きく,これと結合したOH基から水素イオンを解離させる傾向が強いためである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金酸」の意味・わかりやすい解説

金酸
きんさん

水酸化金」のページをご覧ください。

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