日本大百科全書(ニッポニカ) 「金酸」の意味・わかりやすい解説
金酸
きんさん
auric acid
HAu(OH)4と書かれる物質をいうが、このものは実際に遊離して取り出されてはいない。しかしこのものの元となる水酸化金(Ⅲ)Au(OH)3は、両性であるが酸性のほうが強く、アルカリに溶けて金酸塩をつくるので、これを金酸ということが多い。Au(OH)3をHAuO2・H2Oのように書くこともある。たとえば、水酸化金(Ⅲ)を熱水酸化カリウム水溶液に溶かし濃縮するとK[Au(OH)4]・H2Oの淡黄色針状晶が得られ、熱水酸化ナトリウム水溶液では同じようにしてNa[Au(OH)4]の淡緑色結晶が得られる。金酸塩溶液は一般に不安定で、熱、光などにより金を析出して分解しやすく、固体には有機物と熱すると爆発するものもある。
[中原勝儼]