水酸化物(読み)スイサンカブツ(英語表記)hydroxide

翻訳|hydroxide

デジタル大辞泉 「水酸化物」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐ぶつ〔スイサンクワ‐〕【水酸化物】

水酸化物イオン(OH-)を有する化合物水酸化ナトリウムなど。
[補説]OH原子団を水酸基として持つ有機化合物は「ヒドロキシ化合物」と呼ばれる。

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精選版 日本国語大辞典 「水酸化物」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐ぶつスイサンクヮ‥【水酸化物】

  1. 〘 名詞 〙 水酸基 OH を有する無機化合物総称塩基性の化合物。一般式 M(OH)n 金属または金属酸化物と水との反応、塩化物水溶液電解錯体(さくたい)複分解などで生じる。〔稿本化学語彙(1900)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化物」の意味・わかりやすい解説

水酸化物
すいさんかぶつ
hydroxide

一般式M(OH), M(OH)2, M(OH)3などのように成分としてOHを含む化合物をいう。酸化物の水和物M2O・H2O,MO・H2O,M2O3・3H2Oに相当する。普通は塩基性の化合物のみをいう。すなわち、非金属の酸化物あるいはたとえば遷移金属の高酸化数酸化物は、水と化合して形式的には水酸化物の形に書けるが、実際は酸の性質を示すので水酸化物とはいわない。たとえば、B2O3・3H2OはB(OH)3、N2O3・H2OはNO(OH)、CrO3・H2OはCrO2(OH)2と書けはするが、実際にはホウ酸亜硝酸クロム酸などのように酸である。両性酸化物から生ずる水和物では、たとえばSnO2・nH2Oのように水酸化スズ(Ⅳ)、スズ酸のように両様によばれる。

 陽性の強い金属の水酸化物は、金属イオンと水酸化物イオンOH-とからなるが、OH-は分極しやすく、金属の陽性が減少するとともに、Oとの間の結合は共有性を増し、ついには層状構造の巨大分子となる(たとえばAl(OH)3やCr(OH)3など)。アルカリ金属の水酸化物は代表的な塩基で、その水溶液は強アルカリ性を示す。金属の陽性が減少し、金属イオンの酸化数が増大すると塩基性が弱くなる。またそれとともに水に対する溶解度も減少する。NaOH, KOH, RbOH, CsOHは潮解性、LiOH, Ba(OH)2, Sr(OH)2はかなり溶け、Ca(OH)2, La(OH)3はわずかに溶け、いずれも強アルカリである。なお、有機化合物でOH基をもつものは、ヒドロキシ化合物とよんでいる。

[中原勝儼]

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改訂新版 世界大百科事典 「水酸化物」の意味・わかりやすい解説

水酸化物 (すいさんかぶつ)
hydroxide

狭義には,陰イオンとしての水酸化物イオンhydroxide ion OH⁻を含む,一般式M(OH)nn=1,2,3,4など)であらわされる化合物を指す。広義には,金属イオンの水和酸化物hydrous oxide,水和水酸化物hydrous hydroxide,酸のみならずアルカリとも反応する両性水酸化物amphoteric hydroxide(たとえばアルミニウム,スズ,ヒ素の水酸化物Al(OH)3,Sn(OH)4,As(OH)3など)も含まれる。組成からみれば水酸基を含むようにはみえるが,実際には酸である非金属酸化物(たとえばホウ酸B(OH)3=B2O3・3H2O)や,ある種の金属酸化物(たとえばクロム酸CrO2(OH)2=H2CrO4=CrO3・H2O)などは水酸化物とは呼ばない。

 アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびそれらの酸化物を水と直接反応させると水酸化物が得られる。ハロゲン化物その他の塩類水溶液を電解したとき,陽極側に水酸化物が生ずる。また適当な塩の水溶液にアルカリを加えると水酸化物が沈殿する。あるいは逆に複分解反応により難溶性塩を沈殿させ,水溶液中に水酸化物を生成させることもある。

 アルカリ金属の水酸化物は一般に潮解性で,水にかなりよく溶ける(水酸化リチウムはやや水に溶けにくい)。アルカリ土類金属水酸化物の水に対する溶解度は,バリウム,ストロンチウム水酸化物はアルカリ金属水酸化物よりやや小さく(水酸化リチウムの溶解度程度),カルシウムやマグネシウムの水酸化物ではさらに小さくなる。ベリリウムの水酸化物はかなり難溶で,水溶液中ではBe2OH3⁺,Be3(OH)33⁺などの組成をもつヒドロキソ錯体を生成する。他の多くの金属の水酸化物は一般に水に難溶性で,また水溶液中ではかなり複雑な組成をもつヒドロキソ錯体を生ずる。生成した水酸化物の沈殿は放置すると,しばしば相変化を起こし,水和酸化物などに変化し,酸に溶けにくくなることがある。

 有機化合物でOH基をもつものはヒドロキシ化合物と呼んでいる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水酸化物」の意味・わかりやすい解説

水酸化物
すいさんかぶつ
hydroxide

元素と水酸基だけで構成される化合物。一般式 M(OH)m で表わされる (Mは m 価の金属) 。金属の水酸化物が最も普通で,水酸化ナトリウム NaOH ,水酸化バリウム Ba(OH)2 ,水酸化鉄 (III) Fe(OH)3 などがその例である。広義には水酸基をもつ化合物すべてを包含するが,有機物についてはヒドロキシ化合物の名称のほうが一般的である。水酸化物は酸化物の水和物とみることもできるが,非金属酸化物やある種の金属酸化物の水和物,たとえば B2O3・3H2O や CrO3・H2O などは酸の性質を示すので,水酸化物とはいわないで,ホウ酸 H3BO3 ,クロム酸 H2CrO4 という。

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化学辞典 第2版 「水酸化物」の解説

水酸化物
スイサンカブツ
hydroxide

普通には,ある元素がヒドロキシ基とだけ結合した化合物で,金属の水酸化物はその代表的なものである.一般式M(OH)nで表され,酸化物の水和物にあたる.金属または金属酸化物と水との反応,塩化物水溶液の電解,塩の複分解などで得られる.アルカリ金属およびバリウム,ストロンチウムの水酸化物は水に可溶,その他の金属の水酸化物は水に難溶.水溶液は一般にアルカリ性を示し,酸と反応して塩をつくる.なかにはAl(OH)3,Cr(OH)3,Zn(OH)2,Sn(OH)4,As(OH)3などのように両性を示すものもあり,これらは両性水酸化物とよばれる.

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百科事典マイペディア 「水酸化物」の意味・わかりやすい解説

水酸化物【すいさんかぶつ】

古くは水酸基−OHを含む無機化合物一般をいったが,通常は金属と水酸基の結合した化合物M(OH)(/n)の総称。金属酸化物の水和物とも考えることができる。多くは塩基性を示すが,中には酸と塩基の性質を両方示すものもある。水酸化ナトリウムNaOH,水酸化カルシウムCa(OH)2,水酸化アルミニウムAl(OH)3など。

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栄養・生化学辞典 「水酸化物」の解説

水酸化物

 M(OH)nで表される化合物.

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