改訂新版 世界大百科事典 「銃剣道」の意味・わかりやすい解説
銃剣道 (じゅうけんどう)
銃の先に小さい剣を装着して戦う戦闘技法の訓練から発達した武道の一種。西洋の戦場において鉄砲が歩兵の使用武器となってから,接近戦のために鉄砲の先に小さい剣を着けるようになった。それによる刺突の闘技が発達して,訓練が盛んに行われた。日本でも幕末洋式調練が行われるようになり,銃の扱いとともに銃剣術も西欧の指導者から学んだ。日本独自の銃剣の術が考案されるのは,1873年陸軍戸山学校が創設され,その翌年フランス式銃剣術が採用されてからである。日本伝来の槍術の技法も加えて研究され,陸軍の戦技として発展していった。1937年,大日本武徳会は武道の一つとして範士・教士の制度も整え,以後は陸軍のみならず,学校や在郷軍人の間でも広く行われ隆盛したが,第2次大戦後軍隊がなくなるとともにすたれた。しかし,その後他の諸武道同様再び行われるようになり,56年には全日本銃剣道連盟が結成され,武道の一つとして行われている。用具は剣道の防具を用い,心臓部を突くため肩当てを用いる。銃剣は,銃と剣の長さを加えた木製のもので,先に革(またはゴム)で包んだたんぽがある。刺突部位は,心臓部,咽喉部を主とし,正確に部位を指向している技を審判3人(主審1,副審2)で判定して競技する。
執筆者:中林 信二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報