改訂新版 世界大百科事典 「鋳銭使」の意味・わかりやすい解説
鋳銭使 (ちゅうせんし)
日本古代の鋳銭機関の一つ。818年(弘仁9)3月,長門国司を改組して設置されたもので,長官1,次官1,判官2,主典3,鋳銭師2,造銭形師1,史生5の定員を擁していた。同年8月には国内の不要の駅家の駅馬は各1疋ずつとし,残り44疋は鋳銭料鉛の運搬にあてることとされている。その3ヵ月後の11月に〈富寿神宝〉の発行が命ぜられているので,〈鋳銭使〉は同銭の鋳造を目的として設置されたと考えられる。唐では8世紀に〈鋳銭使〉が何回か派遣された例があり,その名称を受け継いだのであろう。この〈鋳銭使〉がいつまで存続したのかは記録を欠き従来明らかでなかったが,東北大学付属図書館所蔵の狩野文庫本《類聚三代格》の出現によってこの問題は解決した。同書所収の825年(天長2)4月7日太政官符は,長門の〈鋳銭使〉を廃止して周防の〈鋳銭司〉を置くというもので,これにより〈鋳銭使〉の廃止時期が明らかとなった。
→鋳銭司
執筆者:栄原 永遠男
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