平安時代に編纂された法令集。編者は不明。1002-89年(長保4-寛治3)の間に編纂されたと推定される。《本朝書籍目録》は30巻と記すが,写本として残存するのは12巻本と20巻本で,いずれも完本はなく,両者を併せても欠失部分がある。内容は,弘仁格,貞観格,延喜格の三代の格(きやく)を類によって聚(あつ)めたもので,三代の格が官司ごとに配列されていたのを,内容により神社事,国分寺事,分置諸国事,調庸事,禁制事,断罪贖銅事など類によって集め,再編成している。三代の格の個々の格は,すべて《類聚三代格》に収録されたと考えられるが,その類聚にあたっては,機械的に配置を変えただけでなく,三代の格が執務の便宜上同一の格を二つの官司の項に収めている場合にはその一方だけを収めており,逆に,一つの格を二つの類に収めた場合もある。また類聚する際に官司名の追加など,形式的な書換えも行っている。本書が編纂されたのは,令外官(りようげのかん)の出現などにより,おもな政務が律令制の官司ごとに分掌されなくなった平安中期の状況を反映するものと考えられる。編纂当時から政務にあたるものの必読書として尊重されたようで,その普及につれて,三代の格はしだいに読まれなくなったと推定される。三代の格の写本も,弘仁格の事書と日付を抜き書きした《弘仁格抄》のほかには残存しない。したがって,欠失部分があるとはいえ,《類聚三代格》は三代の格の内容を伝える貴重な法令集で,律令制の変遷を研究する上で不可欠の史料となっている。《新訂増補国史大系》に収める《類聚三代格》が,もっとも優れた活字本であるが,東北大学図書館の狩野文庫所蔵の写本などによって,国史大系本の欠失部分を補う必要がある。
執筆者:吉田 孝
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弘仁(こうにん)、貞観(じょうがん)、延喜(えんぎ)の三代の格を内容別に集めて再編成した法典。三代の格は『延喜格』が施行されれば弘仁、貞観の両格は無効となるというものではなく、三代の格は同時に有効な法典であった。そして格文は官司別に配列してあり、法典としての格の利用上、検索に不備な点があった。しかも律令(りつりょう)政治が崩れた平安中期の先例重視、政治の有職故実(ゆうそくこじつ)化の大勢のなかで、『類聚三代格』はその要求にこたえる典例整備事業として編纂(へんさん)されたもので、それは『官曹事類(かんそうじるい)』『天長格抄(てんちょうきゃくしょう)』『類聚国史』などを参考として編纂されたものと思われる。そこで官司別の配列を改め、三代の格を神社事、国分寺事などに再編成した。編者は不明であるが、1002年(長保4)から1089年(寛治3)の間の成立で、12巻本と20巻本の二系統の写本があるが、いずれも完全な写本ではなく、両者あわせてもなお一部に欠落があるが、奈良・平安初期研究の重要史料である。『新訂増補国史大系』巻25に収める。
[福井俊彦]
『吉田孝著『類聚三代格』(『国史大系書目解題 上巻』所収・1971・吉川弘文館)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
弘仁・貞観・延喜3代の格文を集大成して分類・整理した法令集。平安中期の成立と推定されるが撰者不詳。3代の格がすべて官司別分類であるのに対し,本書は神社・仏事・諸司・諸国・交替・公廨(くげ)・農桑・調庸・田地など項目別にまとめる。30巻との伝えもあるが,現存するのは12巻本と20巻本の両種。一部に欠失があるため利用に際し注意を要するが,3代の格そのものが失われていることから律令国家研究に不可欠の文献である。格文の収録は機械的ではなく,一つの格文を複数の事項に分割採録する場合もある。「国史大系」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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