改訂新版 世界大百科事典 「陣立」の意味・わかりやすい解説
陣立 (じんだて)
備立て,陣備え,陣法ともいう。陣法という語は《日本書紀》の天武紀12年11月丁亥条に諸国に陣法を習わしめた記事があるのをはじめ,奈良時代,平安時代初期には陣法教習の事実がある。古代における陣法は760年(天平宝字4)11月授刀舎人春日部三関ら6人を大宰府に派遣し,大弐吉備真備から諸葛亮の八陣,孫子の九地および経営向背を学ばせたことで知られるように,中国の戦法であった。このような中国戦法の影響は中世を通じて顕著であるといってよく,戦国時代に甲斐武田氏が八陣の陣法を創始したといわれるのをはじめ,江戸時代には陣立の図面が多く作成された。しかし実戦においていかなる陣法がとられたかは不明である。ただ比較的初期でしかも最も確実な陣立の形状は,《長篠合戦図屛風》や《小牧長久手合戦図屛風》および小牧・長久手の戦や文禄の役に豊臣秀吉が書き出した陣立書に示されるものである。これによって実際の戦闘隊形,兵員配備,軍団構成などの実体を知ることができる。
執筆者:岩沢 愿彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報