改訂新版 世界大百科事典 「階層構造」の意味・わかりやすい解説
階層構造 (かいそうこうぞう)
hierarchical structure
対象をシステムとして,すなわち部分が結合して構成される全体として認識したとする。部分をまたシステムとして認識することを繰り返せば,システム/部分の関係が下方に積み重ねられる。また,対象を部分とするより大きなシステムを認識することを繰り返せば,システム/部分の関係が上方に積み上げられていく。このようにして形成された,システム/部分の関係の多段のシステム構造を階層構造という。生物,組織,人工システム,宇宙,概念,知識など人間の認識するすべての対象は階層構造をもつ。
階層構造において下位および上位への積み重ねを有限にとどめるために,最小要素と最大システムを規定する。最小要素は最下位のレベルであって,それをシステムとして認識することはしない。最大システムは最上位のレベルであって,それを部分とするシステムを考えない。最大システムを規定することを,システムの境界を定めるといい,最大システムより上位のシステムを一括してシステムの環境という。
最小要素と最大システムを規定したとしても,その間の階層構造が1通りに定まるわけではない。たとえば図1の1段の階層をもつシステムは図2のように2段の階層として,それも図のa,bのように異なるシステム構造として認識することができる。どのような階層構造として認識するかは,システムとしての認識の目的・手段・方法に基づいて適切に定めることとなる。
→ヒエラルヒー
執筆者:市川 惇信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報