電力気象(読み)でんりょくきしょう(その他表記)weather related to power industries

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電力気象」の意味・わかりやすい解説

電力気象
でんりょくきしょう
weather related to power industries

電力事業に関する気象のこと。電力事業に関する気象関連業務をさす場合もある。電力気象業務は、気象庁と電力関係機関が協定し、市民生活、産業活動にとって大切な電力事業を支援するために、全国10地域ごとの地方委員会で定められる年次計画に基づき、発雷落雷や気象に関する連絡を行う電力気象通報と、電力に関係した気象予測の高度化・電力関係の技術向上を目的とした講習会・技術報告会(全国大会)などが実施されている。

 電力気象通報は、気象業務法(昭和27年法律165号)に基づく気象庁長官と電力気象連絡会長との申合せによって位置付けられている。その始まりは気象庁の前身である中央気象台が1929年(昭和4)5月に関東地方を対象に雷雨警報を発表するようになったことにまでさかのぼる。

 具体的な電力気象通報業務としては、各地の気象台から電力関係機関に対し、電力の安定供給に資する雷の予想資料・発生確率、電力需要把握に資する1週間先までの気温予想、施設被害防止に資する雨量予報などの情報をオンラインで通報するとともに、電力関係機関から気象台に対しては、雷雲や気象状況把握のため落雷に関する情報や雨、雪の観測データを通報している。なお、気象台に通報された各種観測情報は、気象台の気象解析・事後調査に利用され、電力関係機関に還元されている。

 また、電力事業の安定的・効率的な運用のためには気象に関する知識が不可欠であるため、講習会などを通じて雷、雨、雪、強風などを引き起こす大気現象の理解が図られるとともに、改良を重ねる各種気象予警報などの使用方法についても周知されるよう努力が払われ、最新の技術的成果が事業の運用に還元されている。

 これらの活動は先導的な技術開発の情報交換の場としても大切である。電力事業者からの要望は気象庁の技術に反映されるとともに、電力関係者の気象知識の普及啓発は、電力の安定供給・施設の防災上有効に生かされている。

[中谷洋明]

『電力気象連絡会編・刊『電力気象30年誌』(1959)』『気象庁編『気象百年史』全2冊(1975・日本気象学会)』『広島地方気象台・電力気象連絡会中国地方委員会編、刊『中国地方電力気象通報要領』(1998)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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