気象に関する情報すなわち実況、概況および予報、警報などを総称して気象通報という。気象通報には、(1)国内的に広く一般に知らせるもの、(2)国内的に目的別に作成するもの、(3)東アジアの地域気象センターとしての国際業務用に作成するものなどがある。一つの気象通報が、たとえば(1)と(2)、(2)と(3)のように複合した性格をもっている場合もある。
気象通報の伝達手段には、無線の電信・電話もしくは電子計算機による通信によるものが多いが、一般周知のための報道機関への通報の場合などのように有線の電話・ファクシミリなどによるものもある。
[平塚和夫]
放送機関、新聞社、通信社などに、毎日、天気予報、気象予報図などを有線の電話・電信もしくは電子計算機による通信により通報する。台風、大雨、大雪などに関する気象情報、注意報、警報が行われたときも、同様に通報する。
[平塚和夫]
あらかじめ打合せの済んでいる機関に対し、台風、大雨、大雪などに関する気象情報、注意報、警報などを、発表のつど通報する。
[平塚和夫]
国内、国外向け無線通報としては次の各種がある。
〔1〕気象庁船舶気象無線通報(呼出符号JMC)。国内や国外の船舶を対象とする、東アジア、北太平洋西部およびこれら周辺の地域の警報および概況報、観測成果などの無線モールス放送。
〔2〕気象庁気象無線模写通報(呼出符号JMH、JMJ)。国内や国外の気象業務を行う機関および船舶等を対象とする、東アジア、北太平洋西部とこれら周辺の地域の各種天気図や海況図などの無線模写による放送。JMHとJMJと2通りの内容がある。JMHは汎(はん)用、JMJは主として航空気象用である。
〔3〕東京ボルメット無線電話通報。国内や国外の飛行中の航空機を対象とする、日本およびその周辺の飛行場の観測成果や、おもな国際空港の飛行場予報の無線電話による放送。
〔4〕気象庁気象衛星無線通報。気象衛星の観測成果の無線による通報。
以上はすべてスケジュールに従って行われる。
[平塚和夫]
JMH、JMCのほか、NHKラジオによる漁業気象通報がある。また、海上保安庁の通信系を通じて、海上の予報、警報を放送している。さらに、気象官署が最寄りの漁業用海岸局を通じて、その漁業用海岸局と交信している漁船に対して行う漁業無線気象通報がある。
[平塚和夫]
気象に関する情報を通知することをいう。気象庁など気象業務を専門に扱う機関がこれを行うが,具体的には日本および世界各地の地上気象観測,海上気象観測や高層大気の気象観測などの成果を編集したもの(実況報),気象衛星が撮影した雲画像,各種の解析および予想天気図,高気圧,低気圧や前線系の存在・動向,各種気象注意報・警報などの情報を通報する。実況報は気象通報式にしたがって観測資料を符号による記述形式に組んで編集・整理・総合されている。この通報式には国内用と国際用の両方があるが,いずれも1群が5数字の形式からできている。国際的な実況報の交換をスムーズに行うため,世界気象機関(WMO)は万国共通の国際気象通報式をとりきめているが,実況報の内容に応じて39種類の通報型式が定められている。たとえば,地上実況気象通報式(SYNOP),海上実況気象通報式(SHIP),定時航空実況気象通報式(METAR),地上高層実況気象通報式(TEMP),格子点資料気象通報式(GRID),地上月平均値気象通報式(CLIMAT)などがある。これらの数字情報としての実況報は,日本では東京の気象庁本庁から各地の気象官署,日本気象協会,民間天気会社,航空会社,報道機関などに有線で通報されるほか,国際地区気象無線通報(JMG放送),国際北半球気象無線通報(JMI放送),国内気象無線通報(JMB放送)がラジオテレタイプ放送されている。画情報すなわち気象衛星による雲画像や雲解析図,地上および高層天気図類,地上および高層の予想天気図,渦度や水平風,上昇流などの解析図・予想図,降水量予想分布図などは,国内気象官署向けなど一部有線放送されるほか国内外の利用者向けに無線ファクシミリ(FAX)放送されている(一般利用者用第1気象無線模写通報(JMH放送)と航空関係者用第2気象無線模写通報(JMJ放送))。東アジア,北西太平洋やその周辺地域における警報,気圧系,前線系などの概況,地上および海上気象の実況報,地上天気図の解析結果などは,船舶気象無線通報(JMC放送)されている。そのほか,国内・国外の航空機を対象とする航空ボルメット放送(東京ボルメット無線電話通報(トウキョウ))も行われている。これらの気象情報は気象専門家が気象状況の監視や天気予報作業の基礎資料として利用する。さらにJRの業務に支障をおよぼす恐れのある場合の通報(鉄道気象通報)や電力関係への雷雨などの通報(電力気象通報)がある。一方,一般市民に対する気象通報は,テレビ,ラジオ,177番電話,新聞などを通じて行われているが,中でも天気予報,気象注意報・警報や台風情報,大雨情報が重要である。ラジオの気象通報は,NHK第2放送から9時10分(6時の観測値),16時(12時の観測値),22時(18時の観測値)の各時刻に〈全国天気概況〉〈各地の天気〉〈漁業気象〉が放送されており,日本短波放送から5時20分に700hpaの気象,山の気象,海上の気象が放送されている。気象注意報・警報などは,全国の気象官署から各種の国家防災機関,都道府県の防災担当部局,日本放送協会などに同時放送などでいっせいに伝達される。
執筆者:新田 尚
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