旧内務省が1875年に東京気象台を設立し、87年に改称した中央気象台が前身。文部省、運輸通信省、運輸省と所管を変えながら1956年、運輸省の外局として気象庁になった。さらに2001年の省庁再編で国土交通省の外局になった。自然を監視・予測し、国民の生命財産を災害から守るため、適切な情報提供に努めるのが任務。本庁のほか、地方に気象官署が71カ所あり、職員約5千人のほとんどが観測や予報、それを支えるシステムの構築などを担う技術者。観測で得られたデータは世界各国で共有されている。
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日本の気象,地象(一部),水象(一部)にかかわる業務を担当する国家行政組織法に基づく国家機関で,国土交通省の外局。東京の本庁の下,全国に気象官署多数を擁している。気象庁の仕事は,気象業務法に基づいて,自然災害の予防・軽減,交通安全の確保,産業の興隆など公共の福祉の増進に寄与するとともに,気象業務に関する国際協力を推進することを目的としている。気象庁は,これらの目的を達成するために,気象(大気の現象),地象(地震,火山など地面,地中の現象),水象(陸水および海洋の現象)などに関する観測,その結果の収集と発表をはじめ,予報および気象注意報,気象警報(地震および火山現象を除く)の発表などをおもな業務としている。
気象庁の内部部局は2008年現在総務,予報,観測,地震火山,地球環境・海洋の5部で構成されており,また付属機関として,気象研究所,気象衛星センター,気象大学校など5機関がある。地方機関としては,札幌,仙台,東京,大阪,福岡の5管区気象台,沖縄気象台および函館,神戸,長崎,舞鶴の4海洋気象台がある。さらに,管区気象台および沖縄気象台の下部組織として,47地方気象台,4航空地方気象台,28測候所,6航空測候所などがある。
(1)観測業務 全国の気象台,測候所,観測船は分担して,地上気象観測,レーダー観測,放射能観測,高層気象観測,気象ロケット観測,オゾン観測,海洋・海上気象観測,地震観測,火山観測,地球電磁気観測,生物季節観測などを行っている。さらに地域気象観測システムAMeDAS(アメダス)による降水量,降雪量を中心とする地上観測,静止気象衛星(GMS)〈ひまわり〉による雲画像の取得なども行っている。(2)予報業務 気象観測資料から予報官が各種天気図を描画するが,近年コンピューターによる自動作成が普及してきた。コンピューターはさらに,数値予報で各種予想天気図を作成する。予報官は天気図,雲写真,レーダー・エコー図,雨量分布図などで現在の気象状況を解析し,各種予想図,統計資料,経験則などを総合的に用いて天気予報を行う。状況に応じて各種の気象情報,注意報,警報を発表する。気象庁はさらに週間天気予報,季節予報,波浪予報なども発表している。(3)地震・火山業務 全国の地震・火山活動の調査や監視,情報の発表,津波予報などのほか,近年は地震と火山噴火の予知のための対策も講じている。特に観測強化地域(東海および南関東地域)では関係機関,大学などの資料も集信して24時間監視体制をとっている。(4)海洋・海上気象業務 潮汐観測や高潮・高波対策に備えるほか,気象観測船と海洋気象ブイロボットによる観測を行い,それらの成果と気象観測の成果を総合して波浪の実況図,予想図や海面水温分布図を発表している。気象庁は,このほか通信,統計調査,研究・研修,国際協力業務などを行っている。
日本人や外国人による近代的気象観測は,すでに幕末から地域気候を調べ,天体観測の補助として散発的に各地で行われており,明治初年になると灯台,海軍観象台,北海道開拓使,渡来外国人などの観測として各所で盛んに行われはじめた。なかでも函館には1857年(安政4)の開港以来多くの外国人が渡来し,59-60年(万延1)の2年間,ロシア領事館医師アルブレヒトが気温の観測を行い,またイギリス人T.W.ブラキストンは64年より降雨・降雪記録をとり,68年からは気圧,気温の観測を行っていた。そして開拓使函館支庁の通訳官福士成豊がこれを引き継いだ形で,72年(明治5)最初の気象観測所(函館気候測量所)が創立された。75年6月1日,気象庁の前身,東京気象台が内務省測量司の中に創立された。当時の気象掛は英人ジョイネルH.B.Joynerで,また英人シャーボーH.Scharbauは気象器械をたずさえて来日している。そして創業してから10年以内に,気象業務の根幹である天気予報,暴風警報がドイツ人E.クニッピングの助けをかりて始められ,創業後16年の91年には日本の気象事業は外国人の手から独立した。1887年東京気象台を中央気象台と改称,95年文部省に移管,1945年運輸省所属となる。52年気象業務法が施行され,53年日本が世界気象機関(WMO)に加盟,56年中央気象台が気象庁に昇格,78年日本の静止気象衛星〈ひまわり〉が運用を開始し,今日に至っている。
なお,2001年の省庁再編により,国土交通省の外局に改編された。
執筆者:新田 尚
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国土交通省の外局。気象業務法(昭和27年法律165号)に基づいて、公共の福祉の増進への寄与、気象に関する国際的協力を目的とし、国の気象業務を担当している行政機関。1956年(昭和31)以前は中央気象台とよばれていた。運輸省の外局として活動してきたが、2001年(平成13)1月の省庁再編後は、運輸省の業務を引き継いだ国土交通省の外局となった。
テレビ、新聞などを通じて発表される天気予報や各種の警報があり、これらを通じて一般の市民生活および各種産業と接する部分が多く、諸官庁のなかでは比較的目だちやすい業務を受け持っている。全国に散在する気象官署(気象台)が全体として気象庁を構成しており、東京の本部のみをさすときは気象庁本庁と称している。国際的には、毎日の気象観測値、それを高速度計算機で処理して作成した予想天気図などを、気象通信網により各国と交換したり、近隣諸国から研修生を受け入れたりするなど、世界の国々と密接な協力を行っている。これらの観測に使われる静止気象衛星は、気象庁の施設等機関である気象衛星センターで監視している。なお、各種気象台の業務内容および歴史については「気象台」の項目を参照されたい。
[安田敏明・饒村 曜]
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国土交通省の外局。1956年(昭和31)7月1日設置。1875年(明治8)6月内務省地理寮に気象掛をおいて定時観測を始め,東京気象台と称した。83年には天気図を,84年には天気予報を出した。87年1月中央気象台と改称。95年4月行政整理により文部省に移った。1943年11月新設の運輸通信省に移管され,45年以後運輸省(2001年国土交通省に改編)に属す。56年防災気象業務の重視のため付属機関から外局に昇格して気象庁となる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…気象庁はじめ日本の気象業務従事者の制度,任務などを規定した法律。1952年6月公布,同年12月施行。…
※「気象庁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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