日本大百科全書(ニッポニカ) 「風俗喜劇」の意味・わかりやすい解説
風俗喜劇
ふうぞくきげき
comedy of manners
風習喜劇ともいう。広義には風俗を描いた喜劇一般のことだが、狭義には、とくにイギリスの社交界の男女関係を知的に突き放して描く、洗練されていて機知に富む喜劇をさす。王政復古期から18世紀初頭に盛んに書かれ、エサリッジ、ウィッチャリー、コングリーブ、ファーカー、バンブラらが代表作家としてあげられる。18世紀後半のO・ゴールドスミスやシェリダン、19世紀のワイルド、20世紀のモーム、カワードらに受け継がれた。おおむね常識からすれば不道徳な題材を扱うので批判されることがあり、また情的要素を退けるので大衆にはかならずしも好まれない。これらの特徴を備えている点で、現代のH・ピンターの作品もこれに含められる。
[喜志哲雄]