日本大百科全書(ニッポニカ) 「飛杼」の意味・わかりやすい解説
飛杼
とびひ
flying shuttle
手織り織機の重要な一部分をなす装置であるために、飛杼装置ともいい、またバッタンbattant装置ともいう。手織り織機によって製織するとき、緯糸(よこいと)を入れる操作には、両手で杼(ひ)を互いに受け渡しながら操作することになるが、機(はた)織り作業のうえでは、非常に手間のかかる動作であった。そのためこの緯入れ動作を合理化するためにくふうが凝らされた。
1733年、イギリス人ジョン・ケイJohn Keyによって発明されたが、わが国へは、1873年(明治6)に、フランスに留学していた京都・西陣(にしじん)の織工、佐倉常七(つねしち)(1835―99)によってもたらされ、翌年京都の織殿で初めて公開された。この構造は、右手で紐(ひも)を引くと、筬框(おさかまち)の両側に収めてある杼箱の中の杼をたたくことになるが、すると杼が杼箱から飛び出し緯糸を送り出すことになる。この方法により、作業能率は3倍に上昇した。そして明治10~20年代には、バッタン付き高機(たかはた)が各地に普及することになり、手織り織機に改革がもたらされた。
[角山幸洋]