国指定史跡ガイド 「飛鳥稲淵宮殿跡」の解説
あすかいなぶちきゅうでんあと【飛鳥稲淵宮殿跡】
奈良県高市郡明日香村稲淵にある宮殿跡。飛鳥川の上流、稲淵川の左岸に接する平坦地に所在する。1976年(昭和51)から翌年にかけて行われた発掘調査の結果、4面庇の東西棟を中心に同棟を囲む片面庇の東西棟1・南北棟2の遺構の一部が検出された。きわめて計画性に富んだ整然とした建築遺構であることが判明し、この遺跡が7世紀後半に営まれた宮殿跡であると推定され、発掘部分を「飛鳥稲淵宮殿跡」として、1979年(昭和54)に国の史跡に指定された。調査により、これらの建築遺構は、建て替えもなく、その内側の石敷きも4面庇の東西棟のさらに南に広く延びて敷きつめられていることや、これらの建物遺構が発掘地のさらに南および西に数棟存在することも確認されたことから、この宮殿跡が歴史的重要性をもつとして、2004年(平成16)には平坦部分を中心に追加指定された。この宮殿の基準尺は、前期難波宮跡の内裏東方の門のそれに類似すること、瓦類が出土しないうえに、伝飛鳥板蓋宮跡や宮滝遺跡のように建物間に石敷き面を有すること、さらに、建物配置が法隆寺東院創立以前の地下遺構として検出された斑鳩(いかるが)宮跡といわれるものに近似することなどから、7世紀中ごろ以降に造営されたと推定されている。近畿日本鉄道橿原線ほか橿原神宮前駅からコミュニティバス「岡寺」下車、徒歩約15分。