日本大百科全書(ニッポニカ) 「駒ヶ岳(木曽)」の意味・わかりやすい解説
駒ヶ岳(木曽)
こまがたけ
長野県の南西部、中央アルプス(木曽山脈(きそさんみゃく))の主峰。南アルプスにも同名の山があるため区別する意味で木曽駒ヶ岳ともよぶ。あるいは南アルプスの東の駒ヶ岳に対し西駒ヶ岳ともいう。標高2956メートル。丸みをおびた女性的な山で、支峰の宝剣(ほうけん)岳(2931メートル)や伊那(いな)前岳、木曽前岳などに囲まれている。山頂近くにはヒメウスユキソウやオヤマノエンドウ、タカネシオガマなどの高山植物が多い。宝剣岳の南東面には典型的なカール地形があって千畳敷カールとよばれ、1967年(昭和42)夏にカールの末端近い2611メートルの地点までロープウェーが完成したため、駒ヶ岳登山はきわめて容易になった。ロープウェーの発着地しらび平まで駒ヶ根駅からバス1時間。駒ヶ岳を中心とする中央アルプスは、中央アルプス国定公園に指定されている。
古くから信仰の対象となり、1532年(天文1)徳原長大夫(とくはらちょうだゆう)が山頂に保食(うけもち)大神を祀(まつ)ったと伝えられ、現在駒ヶ岳神社奥宮がある。また、山頂の北東部のカールにできた濃ヶ池(のうがいけ)には、日照りの夏に池畔で騒音をたてると雨が降るとの伝説があり、近世末、麓(ふもと)の人々が雨乞い(あまごい)に登山することがたびたびあったという。伊那側の登山口に駒ヶ根高原が、木曽側に木曽駒高原があり、ともに観光保養地やゴルフ場、キャンプ場などになっている。
[小林寛義]