高分子単結晶(読み)コウブンシタンケッショウ

化学辞典 第2版 「高分子単結晶」の解説

高分子単結晶
コウブンシタンケッショウ
polymer single crystal

全体が一つの結晶で構築されているものを単結晶という.一般に,多くの結晶固体は微結晶(クリスタリット)が集合した多結晶体(polycrystalline)である.金属,無機,低分子物質と比べて高分子単結晶は数 μm 程度の小さな結晶で,結晶表面の分子鎖折りたたみや分子末端による欠陥などを多く含む結晶である.高分子単結晶は図に示すように,板状結晶(ラメラ晶)の厚さが約10 nm,幅約10 μm の大きさで,高分子鎖がラメラ晶面に垂直に規則的に折りたたまれた高分子特有の構造である.このような構造を分子鎖折りたたみ(chain folding)という.たとえば,ポリエチレンキシレン中に加熱溶解させ,約0.01% の希薄溶液をつくり,80 ℃ 前後の温度で保っておくと,パラフィンの単結晶と同様の菱形をした板状(ラメラ)晶が得られる.折りたたみ構造からなるラメラ晶は,球晶を構築する基本構造でもある.高分子鎖が規則的に折りたたまれて生成するラメラ単結晶は,1957年にA. Kellerらによって発見された.高分子単結晶は,一般に希薄溶液から得られるが,温度,濃度,溶媒の違いによって樹枝状晶(デンドライト)やらせん転位によって発達した積層ラメラ晶,双晶化した単結晶の集合体も得られる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報