多結晶(読み)タケッショウ(英語表記)polycrystal

デジタル大辞泉 「多結晶」の意味・読み・例文・類語

た‐けっしょう〔‐ケツシヤウ〕【多結晶】

全体が同一の単結晶からなり、部分によりその結晶軸方向が異なる結晶固体。普通の金属などはこの類。→単結晶

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精選版 日本国語大辞典 「多結晶」の意味・読み・例文・類語

た‐けっしょう‥ケッシャウ【多結晶】

  1. 〘 名詞 〙 多数の単結晶が、さまざまな結晶軸の方向をもって集合しているもの。普通の金属などはこの類。⇔単結晶

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「多結晶」の意味・わかりやすい解説

多結晶
たけっしょう
polycrystal

単結晶が無秩序な方位をとって集合し、凝集している結晶質固体。肉眼あるいは通常の顕微鏡下で判定できることもあるが、偏光顕微鏡での観察あるいはX線回折実験によって単結晶と区別される。多結晶を構成している個々の単結晶を結晶粒あるいはグレインとよび、それぞれの境界結晶粒界あるいは結晶境界という。単結晶の形によっては、ある軸方向だけの方位がそろっている多結晶を生ずることがある。長鎖脂肪族化合物や直鎖高分子のような細長い分子構造をもつ分子の結晶などに例が多い。

[岩本振武]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多結晶」の意味・わかりやすい解説

多結晶
たけっしょう
polycrystal

1つの物体が多数の微結晶から成る状態またその物体。微結晶各個 (結晶粒) は単結晶であるが,集合により結晶粒界を形成し,それが多結晶特有の性質を与える。各結晶粒の方位は通常乱雑無秩序なので,互いに変形を妨げ合う結果,機械的には単結晶より強くなるが,単結晶の物理的異方性は平均化されて等方的となり,化学的には粒界から腐食されやすい。自然に存在する結晶質物体の多くは多結晶で,花崗岩にみるように各結晶粒は必ずしも同種とはかぎらず,合金類にも異種結晶粒より成る例が多い。結晶粒の大きさは多結晶の形成履歴,処理過程によって異なるが,液体からの凝固の場合は一般に緩徐冷却であるほど粗大となりやすい。

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化学辞典 第2版 「多結晶」の解説

多結晶
タケッショウ
polycrystal

多くの微結晶がいろいろな方向をもって一つに集合した結晶.単結晶に対する用語.いろいろな方向といっても,粉末のようにまったくその方向が均等に分布していてデバイ写真をとれば連続的なデバイ環を与えるものは少なく,方向の分布に規則性があるものが普通である.繊維状あるいは板状の結晶がこのような規則性をもちやすい.加工した金属や繊維物質がその代表例である.これらは方位の規則性を示す不連続なデバイ環を与える.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の多結晶の言及

【結晶】より

… 物体全体が一様に結晶質である場合,これを単結晶とよぶ。また,それが小さな単結晶が多く集まって,互いに不規則に向きを異にしてくっつきあっているものを多結晶とよぶ。単結晶の例には天然に産する六角柱状の水晶SiO2の結晶がある。…

※「多結晶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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